「検察事務官はやめとけ」という少しドキッとする言葉を目にして、今、将来への不安や疑問を感じていませんか。
テレビドラマなどで描かれる華やかなイメージとは裏腹に、その仕事内容は想像以上に過酷で、年収 低いという噂や、厳しい出世コースに関する情報も少なくありません。また、高卒や出身大学によってキャリアに差が出るのか、そもそも検察事務官になるにはどれくらいの難易度なのか、知りたいことは山積みでしょう。
この仕事が本当に自分に向いてる人なのか、そして厳しい仕事の中に楽しいと感じる瞬間は存在するのか、具体的な実情が気になるところです。
この記事では、そうしたあなたの疑問や不安を一つひとつ解消するため、検察事務官という仕事のリアルを、客観的なデータと情報に基づいて徹底的に解剖します。
- 検察事務官はやめとけと言われる5つの具体的な理由とその背景
- 検察事務官のリアルな年収と生涯にわたる給与体系
- 仕事のやりがい・楽しさと、求められる人物像の深掘り
- 採用試験の詳細から入庁後のキャリアパスまでの全体像
検察事務官はやめとけと言われる5つの理由
- 検察事務官の厳しい仕事内容とは?
- 年収低いという噂は本当か徹底検証
- 意外と知られていない出世コースの実態
- 高卒からのキャリアは不利になるのか
- 採用試験の難易度はどのくらい?
検察事務官の厳しい仕事内容とは?
検察事務官の仕事が「きつい」「やめとけ」と言われる最大の理由は、その業務の幅広さと一つひとつにのしかかる責任の重さにあります。検察官の最も身近なパートナーとして事件捜査を全面的にサポートするため、求められる役割は多岐にわたります。想像されがちなデスクワークだけでなく、時には捜査の最前線に立つこともあるのです。
職員は本人の希望や適性を考慮されつつ、主に「捜査公判部門」「検務部門」「事務局部門」の3つの部門に配属され、数年ごとに異動(ジョブローテーション)を繰り返しながらキャリアを形成します。それぞれの部門で、全く異なる専門的な役割を担うことになります。
捜査公判部門:事件捜査の最前線
検察官と二人三脚でチームを組み、事件の捜査や裁判の準備を行う、まさに検察の中核を担う部門です。テレビドラマなどでイメージされる検察庁の仕事の多くは、この部門の業務と言えるでしょう。
- 取り調べへの立会:検察官が行う被疑者や参考人の取り調べに同席し、供述内容を正確に記録します。単なる記録係ではなく、場の緊張感を保ち、時には被疑者の様子を観察して検察官に伝えるなど、重要な役割を果たします。
- 捜索・差押えの執行:裁判官が発付した令状に基づき、被疑者の自宅や関係先へ赴き、証拠品を探して差し押さえる業務です。現場では何が起こるか予測できず、冷静かつ迅速な判断が求められます。
- 事情聴取の補助:事件の関係者から話を聞く際、検察官の補助として質問を行ったり、聴取内容を整理したりします。
これらの業務は事件の進展に左右されるため、深夜や早朝の緊急呼び出し、休日の出勤も珍しくありません。常に事件の真相解明というゴールに向かって、強いプレッシャーの中で働き続ける心身のタフさが不可欠なポジションです。
検務部門:事件管理の心臓部
事件の「入り口」から「出口」まで、すべての流れを管理する、検察庁の正確性を担保する上で極めて重要な部門です。いわば、検察庁のバックヤードを支える心臓部と言えます。
- 事件の受理・入力:警察から送致されてきた事件の書類を受け取り、内容を確認してシステムに正確に入力します。すべての捜査はここから始まります。
- 証拠品の管理:事件に関する証拠品を受け入れ、保管、管理、そして裁判終了後には処分を行います。証拠の同一性を保つ「保管の連鎖(Chain of Custody)」を維持する、非常に神経を使う仕事です。
- 刑の執行指揮・罰金の徴収:裁判で判決が確定した後、刑務所への収容を手配したり、罰金や科料が納付されるよう督促・徴収したりします。国の歳入にも関わる、地道ですが大切な業務です。
膨大な量の書類と証拠品を、決められた手順に従ってミスなく処理し続ける必要があります。一つ一つの作業に極めて高い正確性と集中力が要求される部署です。
事務局部門:組織運営の基盤
検察庁という一つの官庁を円滑に運営するための、いわば縁の下の力持ちです。捜査部門の職員が事件処理に集中できる環境を整える、組織運営に不可欠な役割を担います。
- 総務・人事:職員の採用、異動、給与、福利厚生などの手続きを行います。職員の働きやすい環境を整える重要な仕事です。
- 会計・経理:検察庁の予算要求、執行管理、庁舎の修繕や備品の購入など、組織のお金に関わる全ての業務を担当します。
- 広報・その他:国民に検察の活動を理解してもらうための広報活動や、庁舎内のシステム管理など、業務は多岐にわたります。
避けられない精神的な負担の大きさ
どの部門に配属されても、扱うのは人の人生を大きく左右する「事件」です。特に捜査公判部門では、凄惨な事件の写真や証拠品を目の当たりにしたり、被害者の悲痛な叫びや加害者の複雑な事情に直接触れたりする中で、精神的に大きなダメージを受ける職員は少なくありません。
自分の作成した書類一つ、自分のミス一つが、無実の人を苦しめたり、真犯人を逃したりする可能性に繋がりかねないというプレッシャーは、想像を絶するものがあります。
年収低いという噂は本当か徹底検証
「検察事務官は激務の割に年収が低い」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、客観的なデータを見ると、その認識は必ずしも正しくありません。検察事務官は国家公務員であり、身分が保障され、給与は法律で定められた俸給表に基づいて安定的に支給されます。
厚生労働省の情報提供サイト「jobtag」によると、検察事務官の平均年収は765.3万円と公表されています。令和4年分民間給与実態統計調査によると、日本の給与所得者の平均給与は458万円ですので、これを大幅に上回る高い水準にあることがわかります。
ただし、この数字だけを見て判断するのは早計です。キャリアのステージによって、年収の伸び方には特徴があります。
キャリア初期は「低い」と感じる可能性も
採用されたばかりの20代の頃は、一般の国家公務員に適用される「行政職俸給表(一)」が適用されるため、民間の大手企業と比較すると給与が低いと感じるかもしれません。しかし、勤務経験を積むことで、より給与水準の高い「公安職俸給表(二)」の適用対象へと切り替わります。この切り替えが、検察事務官の年収を大きく押し上げる要因となるのです。
【年齢階層別】検察事務官の平均年収の詳細
年齢階層 | 平均年収 | キャリアステージの状況 |
---|---|---|
20~24歳 | 366.3万円 | キャリア初期。行政職俸給表が適用されることが多い。 |
25~29歳 | 371.8万円 | 経験を積み、公安職への切り替えが見え始める時期。 |
30~34歳 | 582.7万円 | 公安職適用者が増え、年収が大きくジャンプアップする。 |
35~39歳 | 819.4万円 | 中堅職員となり、責任ある役職に就き始める。 |
40~44歳 | 812.5万円 | 安定した高水準の給与を維持。 |
45~49歳 | 880.2万円 | 管理職層が増え、キャリアのピークに近づく。 |
50~54歳 | 889.2万円 | 年収のピークを迎える年齢層。 |
上記の表からも分かるように、30代に入ってから年収が大きく伸び、キャリアのピーク時には800万円を超える高水準に達します。この金額には、給料月額の約4.5ヶ月分が支給される期末・勤勉手当(ボーナス)や、通勤手当、住居手当、超過勤務手当などが含まれています。
したがって、「年収が低い」という噂は、キャリア全体で見た場合には当てはまらない、というのが客観的な事実です。
意外と知られていない出世コースの実態
検察事務官のキャリアパスは、司法試験を突破したエリートである検察官とは明確に区別されています。しかし、事務官には事務官独自の、安定した出世コースが用意されています。
基本的には、前述した捜査公判、検務、事務局といった部門を数年おきに異動しながら、様々な業務を経験し、徐々に昇進していくことになります。このシステムは、特定の業務に知識が偏ることを防ぎ、組織全体の業務を理解したゼネラリストを育成することを目的としています。
キャリアの進行に応じて、以下のような役職へとステップアップしていきます。
部門別の主な昇進ルート
- 捜査公判部門: 係員 → 主任捜査官 → 統括捜査官 → 部長・次長・主席捜査官
- 検務部門: 係員 → 検務専門官 → 統括検務官 → 検務管理官
- 事務局部門: 係員 → 係長 → 課長 → 事務局長
これらの昇進は、多くの場合、勤続年数や人事評価によって決まる、いわゆる年功序列の側面が強いと言われています。若くして非常に優秀であっても、先輩をごぼう抜きにして昇進する、といったケースは稀です。この点は、成果主義の民間企業と大きく異なり、人によっては能力が正当に評価されていないと感じ、モチベーションの維持に苦労するかもしれません。
しかし、裏を返せば、真面目に勤務を続けていれば着実にキャリアアップと昇給が見込めるという、国家公務員ならではの安定感があります。長期的な視点で、安定したキャリアを築きたいと考える人にとっては、魅力的な環境と言えるでしょう。
【究極のキャリアアップ】副検事・検事への道
検察事務官のキャリアの中で、最も大きな目標であり、特筆すべきなのが副検事、さらには検事へと昇進できる道が開かれている点です。これは、他の省庁の国家公務員にはない、検察庁独自の制度です。
一定の勤務経験を積み、内部の厳しい選考試験(副検事選考)に合格することで、「副検事」に任命されます。副検事は、検察官の一員として、比較的軽微な事件の捜査や起訴・不起訴の判断、公判での論告求刑などを、自らの責任で行うことができます。検察事務官として培った経験を最大限に活かせる、非常にやりがいのある役職です。
さらに、副検事として経験を積んだ後、特別の選考を経て「特任検事」となる道も存在します。検察事務官からの叩き上げで、検察官バッジを付けることができるというのは、この仕事の大きな夢とロマンと言えるでしょう。
高卒からのキャリアは不利になるのか
検察事務官は、国家公務員採用試験の高卒者試験に合格すれば、学歴に関係なく目指すことができる、門戸の開かれた職種です。しかし、キャリアを長期的な視点で考えた際に、「大卒者と比較して不利になるのではないか」という不安は、特に高卒で入庁を目指す方にとって切実な問題でしょう。
結論から言うと、採用時点での学歴の差が、キャリア初期の昇進スピードや給与に影響することは事実として否定できません。最も顕著な例が、前述した給与水準の高い「公安職俸給表」への切り替えタイミングです。
データベースにある情報や現職の方の声によれば、この重要な切り替えは、大卒者が勤務1年後であるのに対し、高卒者は5年程度の期間が必要とされています。これは、自分より後から入庁してきた年下の大卒職員に、給与や待遇面で先に越されてしまうことを意味します。同じ仕事をしていても待遇に差が生まれる現実は、モチベーションを維持する上で大きな壁となるかもしれません。
この差は、個人の能力とは別に、国家公務員制度における初任給格付が最終学歴を基準にしていることに起因します。しかし、重要なのは、この初期の差がキャリアの全てを決定づけるわけではないということです。
不利を乗り越え、活躍するために
入庁後のキャリアは、本人の努力、実績、そして仕事への姿勢が大きく影響します。高卒であっても、以下の点で不利を乗り越え、大卒者以上に評価されることは十分に可能です。
- 実務能力で差をつける:誰よりも早く仕事を覚え、正確かつ効率的に業務をこなすことで、現場での信頼を勝ち取ることが重要です。特に、特定の分野(例:IT犯罪捜査、会計分析など)の専門性を高めることで、代替不可能な存在になることができます。
- コミュニケーション能力を磨く:検察官や同僚、警察官など、多くの関係者と円滑な人間関係を築き、チームの潤滑油となることで、学歴以上の評価を得ることができます。
- 副検事選考を目指す:前述の通り、副検事への道は学歴に関係なく、全事務官に平等に開かれています。明確な目標として副検事選考を見据え、日々の業務に取り組むことで、高い評価とキャリアアップに繋がります。
高卒であることは、あくまでスタートラインでのハンデキャップに過ぎません。入庁後の活躍次第で、その差を埋め、逆転することさえ可能なのが検察事務官という仕事の奥深さでもあるのです。
採用試験の難易度はどのくらい?
検察事務官になるための第一関門は、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験または高卒者試験)の突破です。この試験の難易度は、巷で言われるように決して低くはなく、相応の準備と対策が不可欠です。
特に、高卒者試験の合格率は例年20%弱で推移しており、約5人に1人しか合格できない狭き門です。大卒程度試験も同様に競争は激しく、計画的な学習なしに合格することは難しいでしょう。
筆記試験の主な内容
筆記試験は、大きく分けて「基礎能力試験(教養試験)」と「専門試験(大卒程度のみ)」で構成されます。どのような内容が問われるのか、概要を把握しておきましょう。
試験区分 | 主な試験科目 | 特徴 |
---|---|---|
基礎能力試験(共通) | 数的処理(判断推理、数的推理、資料解釈)、文章理解(現代文、英文)、社会科学、自然科学、人文科学 | 幅広い分野から出題される。特に、数的処理と文章理解の配点が高く、対策が必須。 |
専門試験(大卒程度) | 憲法、民法、行政法、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学などから選択 | 法律系科目や経済系科目など、自身の得意分野を選択して受験できる。 |
これらの筆記試験に合格しただけでは、まだ内定には至りません。合格者は、その後の「官庁訪問」と呼ばれる各検察庁での面接に進むことになります。
最重要関門:人物評価を重視する面接
筆記試験の点数がいくら高くても、面接での評価が低ければ採用されることはありません。検察事務官の採用では、学力以上に人物そのものが重視される傾向にあります。面接では、以下のような点が厳しくチェックされます。
- なぜ数ある官庁の中で検察庁なのか、という明確な志望動機
- ストレスの多い環境で働き続けられるか(ストレス耐性)
- 論理的に物事を考え、分かりやすく説明できるか(論理的思考力)
- 高い倫理観とコンプライアンス意識を持っているか
- 社会の出来事に関心を持ち、自分なりの考えを持っているか
未経験から社会人転職を目指す場合も、この公務員試験の突破が必須です。学生時代よりも勉強時間を確保するのが難しいというハンデはありますが、社会人経験で培ったコミュニケーション能力や課題解決能力を面接でアピールできるという強みもあります。
検察事務官はやめとけ?目指す価値はあるか
- 検察事務官に本当に向いてる人の特徴
- 過酷なだけじゃない!仕事が楽しいと感じる瞬間
- 検察事務官になるにはどうすればいい?
- 採用における出身大学の影響は?
- 検察事務官やめとけの総括
検察事務官に本当に向いてる人の特徴
ここまで「やめとけ」と言われる厳しい側面を詳しく解説してきましたが、もちろん、それらを乗り越えて大きなやりがいを感じ、日々活躍している職員が大勢います。では、どのような人がこの仕事に真の適性を持っているのでしょうか。情報を基に、求められる資質をさらに深く掘り下げてみましょう。
検察事務官に求められる4つの核心的資質
1. 強い正義感と、現実を受け入れる冷静さを持つ人
社会の秩序を守り、公正を求めるという熱い使命感は、この仕事の絶対的な原動力です。しかし、理想だけでは務まりません。事件は単純な善悪二元論では割り切れず、司法制度にも限界はあります。理想を追い求める情熱と、組織の一員として現実的な判断を下せる冷静さ、その両方を兼ね備えていることが重要になります。正義感が強すぎるあまり、独善的になってしまう人は逆に向いていないかもしれません。
2. 高い柔軟性と、学び続ける知的好奇心がある人
数年ごとの異動は、検察事務官の宿命です。捜査の最前線から、ある日突然、会計業務の担当になることもあります。こうした環境の変化を「新しいことを学べるチャンス」と前向きに捉え、常に学び続ける姿勢が求められます。前例踏襲を重んじる文化もありますが、その中で新しい知識を吸収し、業務改善を考えられるような柔軟性が評価されます。
3. 高度なコミュニケーション力と、人間への深い洞察力を持つ人
検察官や同僚、警察官といった内部の関係者だけでなく、被疑者や被害者、証人など、様々な立場の人々と接します。相手の立場や心情を理解し、信頼関係を築きながら、必要な情報を引き出す能力は不可欠です。特に、閉鎖的と言われる組織の中で円滑に業務を進めるためには、相手の意図を正確に汲み取り、時には自分の意見を押し殺す処世術も必要になるでしょう。
4. 裏方仕事に徹する献身性と、正確性へのこだわりを持てる人
仕事の多くは、検察官を支える地道なサポート業務です。自分が表舞台に立つことは少なくても、検察官というパートナーを輝かせ、組織全体に貢献することに喜びを感じられる献身性が求められます。また、作成する書類の一文字、管理する証拠品の一つが、人の運命を左右します。細部にまでこだわり、正確な仕事をコツコツと続けられる真面目さも必須の資質です。
もしあなたがこれらの特徴に深く共感し、「自分に合っているかもしれない」と感じるのであれば、「やめとけ」というネガティブな情報だけに流されず、自身の可能性を信じて挑戦を検討する価値は十分にあると言えます。
過酷なだけじゃない!仕事が楽しいと感じる瞬間
激務、プレッシャー、閉鎖的な人間関係など、厳しい側面が強調されがちな検察事務官の仕事ですが、その中には他では決して味わえない、大きなやりがいや楽しさを感じられる瞬間も数多く存在します。
最も大きなやりがいとして多くの職員が挙げるのは、やはり「事件の真相解明に貢献できた」という実感です。複雑に絡み合った事件の糸を、検察官と共に一つひとつ解きほぐしていく過程は、知的な興奮に満ちています。取り調べに立ち会い、被疑者が心を開いて真実を語り始めた瞬間や、自分が粘り強く集めた証拠が、裁判で決定的な役割を果たし、正義が実現した時には、全ての苦労が報われるほどの達成感を得ることができます。
ある職員は、何ヶ月もかけた困難な捜査の末に、被害者のご遺族から「あなたたちのおかげで、少しだけ前に進めます」と涙ながらに感謝の手紙を受け取った時、この仕事を選んで本当に良かったと心から感じたと語っています。人の役に立っている、社会を守っているという手応えは、何物にも代えがたい報酬です。
また、検察官から単なる事務員としてではなく、「不可欠なパートナー」として信頼され、頼りにされることも大きな喜びです。捜査方針について意見を求められたり、「この証拠の分析、君の視点でどう思う?」と相談されたり、困難な局面を乗り越えた後に「君がいてくれて本当に助かった」と声をかけられたりした時には、大きなモチベーションが湧いてきます。
職場環境の良さを挙げる声も少なくありません。厳しい仕事だからこそ、職員同士の連帯感は強く、困った時には部署の垣根を越えて助け合う文化があります。新任職員への研修制度も手厚く、上司や先輩が丁寧に指導してくれるため、法律知識ゼロからでも安心してキャリアをスタートできる環境が整っています。国家公務員としての充実した福利厚生や休暇制度を活用し、仕事とプライベートのメリハリをつけている職員も多く、決して仕事一辺倒の生活というわけではないのです。
このように、責任が重いからこそ得られる達成感、パートナーとしての信頼関係、そして互いに支え合う職場文化が、検察事務官という仕事を支える大きな魅力となっています。
検察事務官になるにはどうすればいい?
検察事務官になるための道筋は、非常に明確かつ公平に定められています。学歴や職歴に関わらず、すべての志望者が同じスタートラインに立ち、公的な試験を通じて選抜されます。そのプロセスを具体的に見ていきましょう。
採用までの3ステップ
- 第1ステップ:国家公務員採用一般職試験の受験・合格
検察事務官への扉を開く最初の鍵は、人事院が実施する「国家公務員採用一般職試験」に合格することです。この試験は、最終学歴に応じて「大卒程度試験」と「高卒者試験」の2つの区分に分かれています。試験内容は、幅広い知識を問う教養科目と、法律や経済などの専門科目が中心です。この段階で、法学部出身であることや、特別な法律知識、資格などが求められることは一切ありません。市販の参考書や公務員試験予備校などを活用し、計画的に学習を進めることが合格への最も確実な道です。 - 第2ステップ:官庁訪問(面接)
筆記試験に無事合格すると、次はいよいよ人物評価のステージです。全国各地にある検察庁の中から、自分が勤務を希望する地域の検察庁へ「官庁訪問」という形で申し込み、面接試験を受けます。面接は複数回行われることが多く、志望動機や自己PRはもちろん、ストレス耐性、コミュニケーション能力、倫理観など、検察事務官としての適性が多角的に評価されます。筆記試験の成績だけでなく、この面接での評価が最終的な採用の可否を大きく左右します。 - 第3ステップ:採用・入庁、そして研修
官庁訪問を経て、見事「内定」を得られると、晴れて検察事務官として採用され、キャリアがスタートします。しかし、ここがゴールではありません。入庁後は、検察職員として必要な心構えや、刑法・刑事訴訟法といった法律の基礎、実務で使うシステムの操作方法などを学ぶ、手厚い研修制度が用意されています。法律知識が全くない状態からでも、プロの事務官として成長していける環境が整っているため、安心して飛び込むことができます。
このプロセスからも分かるように、検察事務官への道は、特定の経歴を持つ人だけに開かれているわけではなく、努力次第で誰にでもチャンスがあると言えます。
採用における出身大学の影響は?
公務員試験、特に専門性が高いイメージのある検察事務官の採用において、「特定の有名大学、いわゆる学歴フィルターのようなものが存在するのではないか」と不安に思う方もいるかもしれません。
しかし、この点については明確に「出身大学による有利・不利は存在しない」と言い切れます。検察事務官の採用は、あくまで人事院が実施する国家公務員採用試験の成績と、その後の各検察庁での面接評価という、2つの客観的な指標によって公平に合否が決定されるシステムだからです。
実際に、検察事務官として活躍している方々の経歴は多種多様で、特定の大学に偏っているという事実はありません。高卒で入庁した方から、様々な地方大学の出身者、そして有名私立・国公立大学の出身者まで、幅広いバックグラウンドを持つ人々が、それぞれの持ち味を活かして働いています。
参考情報:司法試験の法科大学院別合格者ランキング
「検察事務官の出身大学ランキング」という公式なデータは存在しませんが、同じ法律分野の専門職である「検察官」を多く輩出する法科大学院(ロースクール)のデータは、検察という組織の学術的な側面を知る上で参考になるかもしれません。
ただし、これはあくまで検察官になるための司法試験の実績であり、検察事務官の採用とは全く基準が異なる点に、くれぐれもご注意ください。
順位 | 法科大学院名 | 合格率(令和4年) | 合格者数/受験者数 |
---|---|---|---|
1 | 京都大学大学院 | 68.0% | 119人/175人 |
2 | 東京大学大学院 | 61.0% | 117人/192人 |
3 | 一橋大学大学院 | 60.0% | 66人/110人 |
4 | 慶應義塾大学大学院 | 57.5% | 104人/181人 |
5 | 東北大学大学院 | 56.3% | 27人/48人 |
繰り返しますが、これは検察事務官の採用基準とは全く関係がありません。検察事務官を目指す上であなたが集中すべきは、大学名や学歴を気にすることではなく、公務員試験で少しでも高い点数を取ること、そして面接で「この人と一緒に働きたい」と思わせるような人間的魅力をしっかりとアピールすること、この2点に尽きます。
検察事務官やめとけの総括
この記事では、「検察事務官はやめとけ」という言葉の真偽を確かめるべく、仕事の厳しい側面から、やりがい、リアルな待遇、そしてキャリアパスに至るまで、あらゆる角度から徹底的に解説してきました。
最後に、本記事の最も重要な要点をリスト形式でまとめます。
- 検察事務官はやめとけと言われる根拠は、人の人生を左右する事件を扱う精神的プレッシャーと激務にある
- 仕事内容は、捜査・公判、事件管理、総務・会計など多岐にわたり、数年ごとの異動が基本
- 平均年収は約765万円と、日本の平均給与を大きく上回る高い水準である
- ただし、キャリア初期の20代は給与が低いと感じる可能性がある
- キャリアパスは年功序列が基本だが、着実に昇進・昇給が見込める安定性がある
- 最大の魅力は、努力と試験次第で検察官である「副検事」を目指せるキャリアパス
- 高卒者は、キャリア初期の給与面で大卒者より不利なスタートになることがあるが、挽回は可能
- 採用試験は高卒区分の合格率が20%弱と難易度が高く、十分な対策が必須
- 筆記試験以上に、人物重視の面接が合否を分ける
- 強い正義感と冷静さ、柔軟性、高いコミュニケーション能力がある人に向いている
- 検察官を支える「裏方」としての役割に徹し、組織に貢献することに喜びを感じられる人が最適
- 事件の真相解明に携わり、社会正義の実現に貢献できる点に、何物にも代えがたいやりがいがある
- パートナーである検察官からの信頼や感謝の言葉が、日々のモチベーションになる
- 採用プロセスは公平で、出身大学による有利・不利(学歴フィルター)は存在しない
- 最終的に「やめとけ」という言葉に流されず、自身の適性と価値観で判断することが何よりも重要
「検察事務官はやめとけ」という言葉は、この仕事の持つ厳しさや過酷さという、紛れもない一面を的確に捉えています。しかし、それは物語の半分に過ぎません。
その厳しい道のりの先には、他では決して得られない大きなやりがいや、国家公務員としての安定した生活、そして社会に貢献しているという確かな実感も、また事実として存在しているのです。
この記事で得た情報が、あなたが後悔のないキャリアを選択するための、確かな道しるべとなれば幸いです。