図書館司書は「本が好き」「静かな職場で働きたい」といった理由から憧れを抱かれがちな職業ですが、現場を知るとその理想は大きく揺らぎます。
実際、「図書館の司書はやめとけ」という言葉が検索される背景には、食べていけないほどの低収入、正規職員へ就職するのが難しい現実、そして日常に潜む見えにくいストレスや、将来仕事がなくなるかもしれないという不安があります。
「私が司書を辞めた理由を吐き出す」と語る元司書の声にあるように、図書館司書の仕事はやりがいだけでは続けられません。底辺と見られがちな立場や、資格を取っても報われない職場環境、老後の備えが難しい待遇面など、多くの気づきにくい欠点が潜んでいます。
しかし、すべての人に向かないわけではなく、「向いている人と向いていない人」の特徴を理解すれば、自分が本当にこの道を選ぶべきかの判断材料になるはずです。将来やめとけばよかったと後悔しないためにも、現実としっかり向き合いましょう。
- 図書館司書が「食べていけない」と言われる給与と雇用の実態
- 私が司書を辞めた理由を吐き出す体験談に見る本音とギャップ
- ストレスや将来の不安がつきまとう図書館業務の裏側
- 図書館司書という仕事の欠点と「稼げる」可能性の探し方
図書館の司書はやめとけという理由とは?
図書館司書という仕事に憧れて資格を取得し、現場に立ったものの、「こんなはずじゃなかった」と感じる人は少なくありません。ここからは、実際に司書として働いた人たちが「やめとけ」と感じたリアルな瞬間を見ていきます。
理想と現実のギャップ、その中に潜む厳しさや苦悩とはどのようなものなのでしょうか。
食べていけない収入の厳しさ
図書館司書として働いても、安定した生活を送るのは正直かなり厳しいのが現実です。司書の多くは非正規雇用で働いており、月収は手取りで15万円前後です。場所によっては10万円台前半(12〜14万円程度)というケースも少なくありません。
年収にして200万円前後であり、これでは一人暮らしすらギリギリで、家庭を持つことや貯金、老後の備えなどは到底考えられない状況です。
なぜそんなに収入が低いのかというと、公立図書館の多くが地方自治体の予算で運営されており、慢性的な財政難により人件費が抑えられているためです。正規職員の採用枠はごくわずかで、多くの司書は業務委託やアルバイト、臨時職員といった形で雇われています。
これらの非正規雇用では昇給もほとんどなく、長く勤めても生活はあまり改善されません。
例えば、司書資格を持ち、図書館で10年以上働いてきた方でも、時給は1,000円未満というケースがあります。仕事の内容はカウンター業務だけでなく、選書、イベント企画、蔵書管理など多岐にわたりますが、それに見合った給与とは言い難いのが実情です。
「本が好き」「人の役に立ちたい」という思いだけでは、生活を維持するのが難しいという壁に、多くの司書が直面しています。
このように、図書館司書という仕事は社会的な意義はあっても、収入面では非常に厳しく、「やめとけ」と言われる大きな理由のひとつになっているのです。
私が司書を辞めた理由を吐き出す
私が図書館司書を辞めた最大の理由は、「理想と現実の落差」に心が折れたからです。本が好きで、静かな環境で人の役に立てる仕事がしたいという純粋な気持ちで目指した職業でしたが、実際には思っていたような穏やかな日々ではありませんでした。
まず、雇用形態が非正規だったため、任期付きで安定しないことが常に不安でした。数年働いても正規職員になれる保証はなく、募集すら出ない年もあります。生活基盤がぐらついたままでは、心の余裕も生まれません。
また、業務量も予想以上に多く、単なる貸出業務だけでなく、地域連携事業、イベント運営、レファレンス対応、古書の修繕や目録整理など、幅広いスキルを求められました。
しかし、それに見合う評価や待遇は一切得られませんでした。どんなに頑張っても昇給はなく、職場では正規職員と非正規職員の間に明確な格差があり、意見も通りづらい空気がありました。
さらに、常連利用者やクレーム対応、精神的にきついやりとりも多く、想像していた「穏やかで知的な仕事」とは程遠かったのです。
最終的に、「このまま働き続けても将来が見えない」「好きだった本すら嫌いになりそうだ」と感じ、辞める決意をしました。図書館司書は確かに素晴らしい仕事ですが、現場で感じた現実は想像以上に厳しく、理想だけでは続けられない職業だと痛感しました。
日々の業務に潜むストレスの正体
図書館司書の仕事は一見穏やかに見えるかもしれませんが、実際には多くのストレス要因を抱えています。静かな空間で本に囲まれた理想的な職場――そんなイメージとかけ離れた現実が、司書たちの心をすり減らしているのです。
最も大きなストレスの原因の一つは、利用者対応の難しさです。図書館は誰にでも開かれた公共施設であるため、マナーの悪い利用者や、理不尽な要求をする常連客、クレーマー的な来館者への対応が日常的に発生します。
「調べて」と言われた内容が漠然としていたり、怒鳴られたりすることもあり、冷静に対応していても精神的な消耗が激しくなります。
また、職場内の人間関係もストレスの一因です。司書は非正規職員が多数を占める環境の中で、立場の不安定さから発言や提案を控えざるを得ない空気があり、正規職員との壁を感じる人も少なくありません。
非正規同士でも雇用期間や経験の差によって不協和音が生まれやすく、人間関係のストレスが積み重なります。
さらに、業務の多様さと責任の重さに比して評価が低いことも、やりがいを損ねる原因となります。蔵書管理、イベント企画、読書会の運営、自治体との連携、資料の選定・修復など多岐にわたる業務をこなしても、それが給与やポジションに反映されることはほとんどありません。
こうした日常的なストレスが積み重なることで、「本が好き」という気持ちすら摩耗し、燃え尽きてしまう司書も多いのが実情です。静かな環境での仕事だからこそ、声に出せない苦労が内側で蓄積されていくのです。
図書館の仕事が将来なくなる不安
図書館司書として働いていると、常に心の片隅にあるのが「この仕事はいつまで存在するのか?」という将来不安です。デジタル化と自治体の財政難が進む中で、図書館という施設の役割や存在意義が見直され、削減・統合の対象になるケースが年々増えてきています。
図書館の利用者数は全国的に見て減少傾向にあり、とくに若年層の利用離れが顕著です。スマートフォンやインターネットが普及したことで、調べ物や読書の多くがオンラインで済むようになり、わざわざ図書館に足を運ぶ必要性が薄れてきているのです。
これに伴い、自治体は図書館の予算や人員を縮小する流れを加速させています。
実際、「指定管理者制度」により図書館の運営を民間委託するケースが増え、正規司書の採用は減少。非正規雇用中心の運営体制となることで、専門性が軽視されるようになり、司書の職域が曖昧化しています。
「資格がなくてもできる仕事」という誤解も広まりつつあり、職業としての地位が危ぶまれる状況です。
さらに懸念されるのは、AIや電子図書館の進展による業務の自動化です。
自動貸出機、チャットボットによるレファレンス対応(導入されつつある)、電子資料の導入など、人的リソースを削減する動きが一部では進行しており、「人がやる必要があるのか?」という問いが現実味を帯びてきています。
このように、図書館の未来は不透明であり、「仕事自体が将来的に消えるかもしれない」という恐れを常に抱えながら働かなければならないのが、司書という職業のつらい現実です。
図書館司書は底辺だと思われがち?
図書館司書という職業は、本来高い専門性と公共的使命を担った重要な仕事ですが、残念ながら「底辺」と見なされることも少なくありません。その理由は、給与水準の低さと非正規雇用の多さにあります。
非正規司書は全国に多数存在し、その待遇は時給1,000円前後、賞与・退職金なしというケースが大半です。いくら経験を積んでも、正規職への登用機会はごくわずか。年齢を重ねても生活が安定せず、「誰でもできる仕事」と誤解されることで、社会的評価も低くなりがちです。
加えて、「本が好きだから」という理由で就職する人が多いことも、外部から軽んじられる原因となっています。情熱や適性よりも、待遇やキャリアパスの現実が重視される時代において、「夢見がち」「趣味を仕事にしただけ」という印象を持たれてしまうのです。
さらに、職場内でも正規職員と非正規職員の間に明確なヒエラルキーがあるため、自信や自己肯定感を持ちにくくなります。どれだけ現場で努力しても、「どうせ非正規でしょ?」と扱われることで、無力感や疎外感が生まれます。
これは精神的にも大きなダメージとなり、離職を後押しする要因となります。
もちろん、実際の仕事は極めて高度で、利用者対応、資料選定、分類知識、情報リテラシーの指導など、専門知識が不可欠です。しかし、それが世間に伝わりにくく、正当に評価されないために、残念ながら「底辺職」と見なされる状況が続いています。
このイメージを払拭するには、図書館司書自身が専門職であるという自負を持つと同時に、社会がその価値を理解し、待遇改善を図っていく必要があります。
図書館の司書はやめとけばよかったと後悔する前に
図書館司書として長く働き続けるには、覚悟と現実的な視点が欠かせません。ここからは、就職の難しさや資格の限界、将来設計の課題など、より深いキャリア面の問題に踏み込んでいきます。自分にとってこの仕事が本当に合っているのか、見極めるためのヒントが詰まっています。
正規職員への就職が難しい現実
図書館司書として安定したキャリアを築きたいと考えるなら、正規職員になることがほぼ必須ですが、それが非常に難しいという現実があります。司書資格を持っていても、正規採用の門は狭く、競争率は異常なほど高いのが現状です。
その理由のひとつは、公立図書館における採用枠の少なさです。多くの自治体では図書館の運営においてコスト削減を進めており、正規職員は最小限にとどめ、残りは臨時職員や業務委託、民間スタッフで補っています。
数年に一度、数名の採用しか行われない市区町村も多く、その枠に全国から応募が殺到するため、倍率は10倍以上になることも珍しくありません。
さらに、採用試験も一般的な公務員試験と同様に、法律・時事・作文・面接など複数の科目に対応する必要があり、単に図書館の知識だけでは合格できません。
司書の業務経験があっても、それが評価される保証もなく、「何年働いても正規になれない」という声が現場では多数上がっています。
実例として、10年以上公共図書館で非常勤司書として勤めながら、何度も正規採用試験に挑戦し続けている人がいますが、年齢制限や採用数の少なさがネックとなり、いまだに叶わないままというケースも存在します。
これは決して珍しいことではなく、多くの司書が「不安定な立場から抜け出せない苦しさ」を共有しているのです。
このように、図書館司書として正規職に就くのは狭き門であり、資格や経験だけでどうにかなる世界ではありません。その厳しい現実を理解せずに飛び込んでしまうと、長期的に大きな壁にぶつかることになります。
資格を取っても報われない?
図書館司書になるには「司書資格」が必要とされていますが、この資格を取得したからといって報われるとは限りません。
現場では、資格よりも「安く雇えるかどうか」や「即戦力かどうか」が優先される傾向が強く、資格を持っているだけでは、希望する正規雇用や待遇には結びつかないのが実情です。
その背景には、司書資格の取得難易度と実務評価のギャップがあります。現在、司書資格は大学・短大での履修や、通信教育などで比較的取得しやすくなっており、取得者は年々増加しています。
しかし、資格保持者が増える一方で、図書館の採用枠は横ばいか縮小しており、需給バランスが大きく崩れています。また、図書館側が資格保持者を優遇するとは限らず、無資格でも応募可能な求人が多く存在します。
特に民間委託の図書館や指定管理の現場では、採用条件に「資格不問」と明記されていることも多く、「資格があるのに採用されない」「無資格者と同じ時給で働かされる」といった声も少なくありません。
たとえば、ある地域の図書館では、司書資格を持つ非正規職員が、無資格の学生アルバイトと同じシフトに入り、同じ業務を担当していました。待遇の差もなく、業務評価にも資格の有無が反映されない状況に、資格保持者がやり場のない不満を抱えるのは当然です。
つまり、資格を取ることはスタートラインに立つ条件にすぎず、それ自体に報酬や安定をもたらすものではありません。司書の仕事を志すなら、資格だけでなく「どこで、どのように働きたいか」まで見据えた現実的な戦略が必要になります。
老後を見据えた働き方の課題
図書館司書として働く上で、多くの人が見落としがちなのが「老後」の課題です。実際、非正規雇用が中心の図書館業界においては、安定した年金や退職金が得られず、将来にわたっての生活設計が非常に難しいのが現実です。
司書の多くは、パート・アルバイト・臨時職員といった雇用形態で働いており、社会保険や厚生年金に加入できないケースも多くあります。仮に加入できたとしても、給与が低いため保険料や年金の支払い額が少なくなり、将来的に受け取れる年金額もごくわずかにとどまります。
また、非正規の場合は雇い止めのリスクも高く、60歳以上になっても働き続けるのは困難です。
一方で、退職金や企業年金が支給される制度も整っていないため、長年図書館に尽くしてきたとしても、老後に残るのはわずかな預貯金と年金のみ。
貯蓄が十分にできていなければ、生活保護を受けざるを得ない状況に追い込まれる人もいます。
実際、定年後に再雇用の形で働こうとしても、賃金がさらに下がったり、業務内容が制限されたりするため、「体力的にも経済的にも続けられない」と辞めてしまう人も少なくありません。
つまり、図書館司書は「好きなことを仕事にする」魅力がある一方で、老後を見据えたときには非常にリスクの高い職業です。若いうちから将来を視野に入れ、計画的に働き方を考えることが欠かせません。
向いている人と向いていない人の違い
図書館司書という仕事には明確に“向いている人”と“向いていない人”が存在します。表面的なイメージでは判断しづらいですが、現場での業務内容や働き方を理解すれば、その適性の差ははっきりと見えてきます。
向いている人の特徴は、まず忍耐力と地道な作業が苦にならないことです。蔵書の整理、データ入力、目録作成などの仕事は、単調でミスが許されない反復作業が中心になります。さらに、マニュアル通りでは対応しきれないレファレンス業務や、トラブル対応なども求められます。
また、コミュニケーション能力も不可欠です。図書館は静かな場所という印象がありますが、実際には子どもから高齢者、時には支援が必要な方まで、幅広い層と関わる場です。利用者のニーズをくみ取り、丁寧かつ臨機応変に対応できる人でなければ、業務はうまく回りません。
一方で、向いていない人の特徴は、「本が好き」だけで職業を選んでしまうタイプです。読書好きであることはスタート地点に過ぎず、実際の仕事には体力、根気、対人対応など多面的なスキルが求められます。
理想を追い求めすぎると、現実とのギャップで燃え尽きてしまうリスクも高まります。
さらに、変化や効率よりも「安定と手順」を重視する図書館の特性に合わない人、成果主義やスピード感を求める人にも不向きです。周囲との協調や継続性を重視する文化の中で、自分の価値観が合っているかを見極めることが重要です。
職業としての欠点と稼げる可能性
図書館司書という職業は社会的意義が高く、知的で品のあるイメージを持たれがちですが、現実的には多くの欠点を抱えています。とくに「職業として稼げるのか?」という点においては、非常にシビアな状況です。
まず大きな欠点は、給与水準が極端に低いことです。非正規雇用では時給1,000円前後、月収で15万円に届かないこともあり、年収200万円を切るケースも珍しくありません。生活費を差し引けば貯金すら難しく、「安定した職業」とは程遠い待遇です。
また、キャリアパスが非常に限られているのも課題です。司書の仕事には昇進や役職といった概念がほとんどなく、何年働いてもポジションや給与が変わらないことが一般的です。スキルを磨いても、それが収入に反映されにくい構造になっているのです。
では「稼げる可能性はゼロなのか」と言えば、そうとも言い切れません。たとえば、私立大学図書館や研究機関、国立国会図書館など、一部の専門性が高くかつ予算がある機関では、正規雇用かつ安定した高収入を得られるケースも存在します。
ただし、それらは募集数が非常に限られており、高度な知識・経験・実績が求められるため、狭き門です。
また近年では、「図書館司書+α」のキャリアを目指す人も出てきています。司書の知識を活かして、情報整理、教育支援、アーカイブ管理など、他分野と掛け合わせることで収入アップを実現する例もあります。
結論として、図書館司書はそのままでは「稼げる職業」にはなりませんが、自分の志向とスキル次第では可能性を広げることもできる職種です。ただし、それには戦略と努力が欠かせないという前提を理解する必要があります。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 図書館司書は非正規雇用が多く、食べていけないほどの収入の厳しさがある
- 「私が司書を辞めた理由を吐き出す」という声に共通するのは理想と現実のギャップ
- 利用者対応や職場の人間関係など、日々の業務に潜むストレスが多い
- 図書館の将来性が不透明で、「なくなる」可能性への不安が広がっている
- 社会的評価が低く、「底辺」と見なされることもあり自己肯定感が下がりやすい
- 正規職員の採用は極めて狭き門で、就職が難しい現実がある
- 資格を取得しても採用や待遇に反映されないことが多く、報われにくい
- 老後に向けた貯蓄や年金制度が脆弱で、将来設計が立てにくい
- 地道で幅広い業務に対応できる忍耐力があり、対人対応に強い人は向いている
- 稼げるキャリアを築くには戦略が必要で、「司書+α」のスキルがカギになる
図書館司書という仕事は、知的で穏やかなイメージの裏に、多くの現実的な課題を抱えています。収入の低さ、雇用の不安定さ、ストレスの多さ、将来性のなさといった問題は、理想だけでは乗り越えられません。
しかし、仕事の価値や魅力がないわけではありません。自分の適性や働き方の選択肢をしっかり見極めることができれば、司書として納得できる道を歩むことも可能です。「やめとけ」と言われる理由を知ることは、後悔しない選択への第一歩です。