会葬礼状の自作はバレる？偽造リスクと代替書類の全て

突然の不幸により、忌引き休暇を申請する際に必要となる会葬礼状。しかし、最近増えている家族葬などでは、会葬礼状が手に入らないケースも少なくありません。

このような状況で、「会葬礼状を自作できないか」と考える方がいるかもしれませんが、その安易な考えが深刻な事態を招く可能性があります。

会葬礼状の自作はバレるのか、そして偽造がバレるとどうなるのか。また、会社の葬儀で嘘をついたらどのような結末が待っているのでしょうか。

この記事では、そもそも会葬礼状は誰が作成するものなのかという基本から、無料テンプレートを使った作り方、100均のハガキやコンビニでの印刷は有効なのかといった具体的な疑問に答えます。

さらに、大学への提出方法や、そのまま使える例文、そして最も重要な、会葬礼状がない場合の代わりになるものは何か、という点について詳しく解説していきます。失敗して後悔する前に、正しい知識と対処法を身につけましょう。

この記事を読むことで、以下の点について理解を深めることができます。

会葬礼状の自作がバレる理由と潜むリスク

会葬礼状の偽造がバレる具体的な手口

「パソコンで簡単に作れそう」という軽い気持ちで会葬礼状を偽造しても、その多くは人事担当者や上司の目をごまかせません。偽造が発覚する手口は、思いのほか多岐にわたります。

まず最も分かりやすいのが、紙の質と印刷のクオリティです。葬儀社が用意する正式な会葬礼状は、一般的に「奉書紙（ほうしょがみ）」と呼ばれる、独特の風合いを持つ和紙や、しっかりとした厚みのある専用紙が使われます。しかし、自作の場合は市販のコピー用紙やハガキを使用することが多く、その質感の違いは一目瞭然です。インクジェットプリンターで印刷した場合のインクのにじみや、レーザープリンター特有のトナーの光沢なども、プロの印刷物とは明らかに異なります。

次に、書式やフォントの問題が挙げられます。会葬礼状には、特有の言い回しやレイアウトの慣習が存在します。例えば、句読点を使用しない、縦書きが基本、毛筆体のフォントが使われる、といった点です。インターネット上の情報だけでこれらを完全に再現するのは難しく、不自然な改行や普段使われないフォントの選択などから、違和感を持たれる可能性があります。

さらに決定的なのが、記載内容の矛盾です。実在する葬儀社名を記載した場合、会社側が確認のためにその葬儀社へ電話をかけることがあります。当然、葬儀の事実がなければ偽造は即座に発覚します。また、同じ葬儀に参列した他の同僚がいた場合、その人が受け取った本物の会葬礼状と内容が異なれば、疑いを持たれるのは避けられません。

これらの点から、素人が作成した会葬礼状は、細部を注意深く確認されると、非常に高い確率で偽造であることが見破られてしまうのです。

会社の葬儀で嘘をついたらどうなるのか

忌引き休暇を取得するために「身内に不幸があった」と嘘をつき、偽造した会葬礼状を提出する行為は、単に「ズル休み」という言葉で済まされる問題ではありません。この行為が発覚した場合、社会人としての信用を根底から覆す、極めて深刻な事態を招きます。

会社がこのような虚偽の申告を重く見るのには理由があります。忌引き休暇は、従業員が近親者を亡くしたという精神的に非常につらい状況に配慮し、故人との最後のお別れを十分にできるよう設けられた特別な休暇制度です。この制度を私的な目的で悪用することは、会社の信頼や善意を踏みにじる行為と見なされます。

発覚した場合に考えられる処分は、就業規則にもとづき厳格に下されます。軽いものでは口頭での厳重注意や始末書の提出で済むかもしれませんが、多くの場合、減給や降格、出勤停止といった懲戒処分の対象となる可能性が高いです-。事態が悪質であると判断されれば、「諭旨解雇」や「懲戒解雇」といった最も重い処分に至るケースも十分に考えられます。懲戒解雇となれば、今後の転職活動においても経歴に大きな傷が残ります。

また、法的なリスクもゼロではありません。公的な文書ではありませんが、会社に提出する証明書類を意図的に偽って作成・提出する行為は、「私文書偽造罪」に問われる可能性があります。刑事罰に至るケースは稀ですが、法律に抵触する行為であるという認識は持つべきです。

なによりも失うものが大きいのは、職場での「信頼」です。一度失った信頼を回復するのは極めて困難であり、同僚や上司との人間関係は悪化し、職場に居づらくなるでしょう。その後の昇進や重要な業務の担当など、キャリア全体に長期的な悪影響を及ぼすことは避けられません。

そもそも会葬礼状は誰が作成するのか

会葬礼状を自作しようかと考える前に、本来この書類がどのような位置づけのもので、誰が作成するのかを理解しておくことが大切です。

会葬礼状は、故人の通夜や葬儀・告別式に参列してくださった方々（会葬者）に対し、喪主や遺族が感謝の気持ちを伝えるために渡すお礼状です。忙しい中を駆けつけてくれたことや、香典をいただいたことへの謝意を示す、非常に大切な役割を持っています。

この作成の主体となるのは、あくまで葬儀を執り行う喪主および親族一同です。そして、実際の制作は、葬儀全体を取り仕切る葬儀社に依頼するのが最も一般的です。葬儀社は、宗教・宗派ごとの定型文や様々なデザインのテンプレートを用意しており、喪主は故人の名前や葬儀の日付、喪主名などを伝えるだけで、適切な会葬礼状を準備してくれます。

つまり、会葬礼状は単なる「葬儀に参列した証明書」ではなく、「遺族から会葬者への感謝状」という側面が強いのです。会社や学校へ提出するのは、あくまでその副次的な役割に過ぎません。

この本来の目的を考えると、忌引き休暇の証明のためだけに、遺族ではない人物が勝手に作成するという行為がいかに不適切であるかが分かります。それは、故人と遺族の想いが込められるべき手紙を、個人的な都合で偽ることに他なりません。

家族葬で会葬礼状がない場合の対応策

近年、葬儀の形式は多様化しており、特に家族やごく親しい近親者のみで故人を見送る「家族葬」を選ぶケースが大幅に増えています。家族葬では、一般の会葬者を招かないため、返礼品とともに渡される会葬礼状を用意しないことが珍しくありません。

このような状況で忌引き休暇を申請する際、会社から会葬礼状の提出を求められて困ってしまうことがあります。しかし、ここで慌てて偽造に走るのは絶対にやめてください。最も重要で正しい対応策は、正直に会社の人事部門や直属の上司に状況を説明し、相談することです。

「先日執り行いました祖母の葬儀ですが、故人の遺志により家族葬としたため、会葬礼状のご用意がございません。忌引き休暇の申請にあたり、代わりになる書類はございますでしょうか」というように、正直に伝えましょう。

現代において家族葬は広く認知されており、多くの会社ではその事情を理解し、柔軟な対応を取ってくれます。会葬礼状がないからといって、忌引き休暇が認められないということはまずありません。むしろ、正直に相談することで、誠実な対応と評価されるはずです。

会社側も、従業員が休暇を不正に取得していないかを確認できれば良いため、会葬礼状に代わる何らかの証明を求めることが一般的です。どのような書類が必要になるかは会社の方針によって異なりますので、まずは担当者に確認し、指示に従うことがトラブルを避けるための最善の道となります。

学生が大学へ提出する場合の注意点

忌引きによる授業の欠席は、社会人だけでなく学生にとっても重要な問題です。多くの大学では、忌引きによる欠席を「公欠（こうけつ）」扱いとし、出席日数に影響が出ないよう配慮する制度が整っています。この公欠を申請する際に、証明書類の提出を求められることが一般的です。

証明書類として、会葬礼状の提出を求める大学は少なくありません。会葬礼状には故人名、喪主名、葬儀の日時などが記載されており、葬儀が執り行われた事実を客観的に証明できるためです。

しかし、前述の通り、家族葬などで会葬礼状がないケースも増えています。学生の場合も、社会人と同様に、まずは大学の担当窓口（学務課、教務課、学生課など）に正直に状況を説明し、相談することが第一です。

大学側も、会葬礼状がないケースを想定していることが多く、代替となる書類での証明を認めてくれる場合がほとんどです。どのような書類が必要かは大学の規定によって異なりますので、必ず事前に確認してください。一般的には、後述する「死亡診断書（または死体検案書）のコピー」や「火葬許可証のコピー」などが代替書類として認められやすい傾向にあります。

無断で欠席したり、証明書類を提出しなかったりすると、単なる「欠席」扱いとなり、単位取得に影響が出る可能性があります。大切なご家族とのお別れの時間を過ごしたにもかかわらず、学業で不利益を被ることのないよう、必ず定められた手続きを踏むように心がけましょう。

会葬礼状の自作はバレる！正しい代替手段

会葬礼状がない場合の代わりになるもの

会葬礼状がない場合でも、忌引き休暇の申請を諦める必要は全くありません。会社や大学は、葬儀の事実を客観的に証明できる書類があれば、柔軟に対応してくれます。以下に、会葬礼状の代わりとして一般的に認められやすい書類を挙げます。

これらの書類を準備する前に、まずは会社の人事担当者に「家族葬のため会葬礼状がないのですが、どの書類を提出すればよろしいでしょうか」と確認することが最も重要です。

会社が指定する書類を用意することで、手続きはスムーズに進みます。

自作の作り方と無料テンプレートの活用

この記事では一貫して会葬礼状の自作・偽造に警鐘を鳴らしていますが、知識として一般的な作成方法を知っておくことは無駄ではありません。

ただし、以下の方法は、あくまで遺族が正式に作成する場合や、どうしても代替書類が用意できない場合の最終手段を検討する際の参考情報であり、安易な偽造を推奨するものではないことを強くご認識ください。

一般的な作成手順

1. 原稿の作成: まず、記載する内容を決めます。故人名、続柄、葬儀の日時、喪主の住所・氏名、参列への感謝の言葉などが基本要素です。宗教・宗派によって言い回しが異なるため、注意が必要です。
2. 用紙の準備: 本来は奉書紙など専用の紙が望ましいですが、自作の場合は厚手の和紙風の用紙や、無地の官製はがきなどが使われることがあります。
3. レイアウトと印刷: Wordなどの文書作成ソフトで、縦書きに設定し、毛筆体のフォント（楷書体や行書体など）を使用してレイアウトします。句読点（、。）は使わないのが慣例です。作成したデータをプリンターで印刷します。

無料テンプレートの活用

インターネット上には、会葬礼状の無料テンプレートを配布しているサイトも存在します。これらのテンプレートを使えば、レイアウトの手間は省けますが、注意点が二つあります。

一つは、テンプレートのデザインが一般的すぎたり、他の偽造に使われたものと酷似していたりする可能性があることです。もう一つは、テンプレートをダウンロードする際に、ウイルスに感染したり、不要なソフトがインストールされたりするリスクがあることです。

繰り返しますが、自作には常に偽造発覚のリスクが伴います。紙の質、印刷のクオリティ、定型的な文面など、プロの目から見れば不自然な点は数多くあります。これらのリスクを冒してまで自作するメリットは、何一つないと言っても過言ではありません。

そのまま使える会葬礼状の例文を紹介

会葬礼状の文面は、宗教や宗派によって用いる言葉が異なります。ここでは、最も一般的な仏式と、神式、キリスト教式の例文をそれぞれ紹介します。

自作を検討する際の参考情報ですが、これらの文面を用いる場合でも、前述した偽造のリスクがなくなるわけではない点にご注意ください。

仏式の例文

謹啓 亡父　〇〇儀　葬儀に際しましてはご多用中にも拘わらずご会葬を賜り且つご鄭重なるご香料を賜りまして誠に有難く厚く御礼申し上げます 早速拝趨の上ご挨拶申し上げるべきところ略儀ながら書中をもちまして御礼申し上げます 敬具

令和〇年〇月〇日

〒〇〇〇-〇〇〇〇 （住所）〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇-〇 喪主　〇〇　〇〇 外　親戚一同

神式の例文（「御玉串料」「帰幽」など神道用語を使用）

故　〇〇儀　帰幽の節は御多用中の処御懇篤なるご弔詞を辱うし且つ御玉串料を賜りまして誠に有難く深謝申し上げます 早速拝眉の上親しく御礼申し上げるべき筈ではございますが略儀ながら書中を以て謹んで御挨拶申し上げます

令和〇年〇月〇日

〒〇〇〇-〇〇〇〇 （住所）〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇-〇 喪主　〇〇　〇〇 外　親族一同

キリスト教式の例文（「ご献花」「神の御許へ」などキリスト教用語を使用）

故　〇〇は地上での務めを終え神の御許に召されました 生前は皆様より温かいご厚情を賜りましたことを心より感謝申し上げます 本日はご多用にもかかわらずご会葬またご鄭重なるご献花を賜り誠にありがとうございました 略儀ながら書中にて御礼のご挨拶を申し上げます

西暦〇〇〇〇年〇月〇日

〒〇〇〇-〇〇〇〇 （住所）〇〇県〇〇市〇〇町〇-〇-〇 遺族代表　〇〇　〇〇 親族一同

執筆の注意点

• 句読点を使わない: 文章の区切りや終わりには句読点（、や。）を付けないのが伝統的なマナーです。
• 重ね言葉を避ける: 「重ね重ね」「たびたび」など、不幸が繰り返すことを連想させる言葉は使いません。
• 縦書きが基本: 日本の正式な手紙と同様に、縦書きで作成するのが一般的です。

会葬礼状の印刷はコンビニでも可能か？

作成した会葬礼状のデータを、コンビニのマルチコピー機で印刷することは技術的に可能です。多くのコンビニでは、USBメモリやスマートフォンのアプリ経由で文書ファイルを印刷できる「ネットワークプリントサービス」を提供しています。

このサービスを利用すれば、自宅にプリンターがない場合でも手軽に印刷できるというメリットがあります。ハガキサイズの用紙を選択することも可能です。

しかし、ここにも大きな落とし穴が存在します。コンビニのマルチコピー機は、あくまでオフィス向けの複合機であり、その印刷品質はプロの印刷業者のものとは比べ物になりません。特に、毛筆体のフォントの繊細なかすれや、和紙の風合いを再現することは困難です。

また、用紙の選択肢も限られています。コンビニで用意されているのは、一般的な普通紙や光沢紙、官製はがき程度です。会葬礼状に用いられるような、質感の高い奉書紙などは使えません。

したがって、コンビニで印刷した会葬礼状は、家庭用プリンターで印刷したものと同様に、「いかにも自作した」という印象を与えてしまいます。手軽さというメリットはありますが、それは偽造発覚のリスクを高める要因にしかならないのです。手間やコストをかけたとしても、プロの仕事には到底及ばないという事実を理解しておく必要があります。

100均のハガキで自作する際の注意点

コストを抑えようと、100円ショップで販売されているハガキや和紙風の用紙を使って会葬礼状を自作しようと考える人もいるかもしれません。確かに、100円ショップには様々な種類の紙製品が並んでおり、一見すると使えそうなものも見つかります。

しかし、これもまた偽造発覚のリスクを著しく高める行為です。最大の注意点は、その「品質」です。100円ショップの製品は、価格相応の品質であり、葬儀社が使用する専門の用紙とは、手触り、厚み、色合い、繊維の質感など、あらゆる点で異なります。

例えば、「和紙風」と書かれた用紙であっても、それはあくまで表面的なデザインを模したものであり、本物の和紙が持つ独特の風合いや格調はありません。人事担当者など、多くの会葬礼状を目にしてきた人が手に取れば、その違いは瞬時に分かってしまいます。

また、これらの用紙はインクジェットプリンターでの印刷を想定して作られていない場合も多く、インクが滲んだり、裏写りしたりして、非常に見栄えの悪い仕上がりになる可能性があります。

会葬礼状は、故人や遺族の品格を示すものでもあります。100円ショップの安価なハガキで代用するという発想自体が、この書類が持つ本来の重みを軽視していることの表れとも言えます。コストを惜しんだ結果、社会的な信用を失うのでは、あまりにも代償が大きすぎます。偽造を成功させるための「抜け道」にはなり得ないことを、強く認識してください。

会葬礼状の自作がバレるリスクと対処法の総括

この記事で解説してきた通り、会葬礼状の自作や偽造には、発覚するリスクと深刻な結末が常に伴います。安易な気持ちで不正行為に手を染める前に、一度立ち止まってください。

最後に、重要なポイントをまとめます。