「常用型派遣はやめとけ」という言葉を耳にして、不安や疑問を感じていませんか。安定していると聞く一方で、なぜ否定的な意見があるのか、その実態が気になっている方も多いはずです。
常用型派遣とは何か、そして常用型派遣と無期雇用派遣の違いや、正社員との待遇の違いについて、はっきりと理解している人は少ないかもしれません。
特に、専門職であるエンジニアの方や、将来のキャリアを考える上で、この働き方が本当に自分に向いている人なのか見極めることは大切です。給料はどのくらいで、ボーナスは支給されるのか、例えば派遣で月20万の手取りは現実的なのか、といった金銭的な問題は生活に直結します。
また、3年ルールの適用外であるメリットの裏に、派遣の暗黙のルールや、何歳まで働けるのかという将来への懸念、もしクビにされたらどうなるのか、辞めたいと思った時にスムーズに退職できるのか、といったリスクも存在します。
多くの常用型派遣会社一覧の中から安易に選んでしまい、後悔するケースも少なくありません。
この記事では、しばしば「正社員型派遣はやめとけ」とも言われるこの働き方について、その仕組みからメリット、そしてなぜ「やめとけ」と言われるのか、その深刻なデメリットまで、あらゆる角度から徹底的に解説していきます。
- 常用型派遣と正社員・登録型派遣との根本的な違い
- 給料や3年ルールといった制度面のメリットとデメリット
- キャリア形成や人間関係で「やめとけ」と言われる理由
- 常用型派遣に向いている人の特徴と辞めたい時の対処法
常用型派遣はやめとけ?安定という言葉の裏側
- そもそも常用型派遣とは?無期雇用派遣との違い
- 常用型派遣と正社員の決定的な違いとは?
- 気になる給料とボーナス!月20万の手取りは?
- 3年ルール対象外でも安心できないキャリア
- 派遣の暗黙のルールとエンジニアが置かれる状況
そもそも常用型派遣とは?無期雇用派遣との違い
常用型派遣という働き方を検討する上で、まずその定義と、しばしば混同される他の雇用形態との違いを正確に理解しておく必要があります。
常用型派遣の基本的な仕組み
常用型派遣とは、派遣会社の正社員または契約社員として無期限の雇用契約を結び、その上で派遣先企業に派遣されて就業する働き方を指します。一番のポイントは、雇用主が実際に働く派遣先企業ではなく、あくまで派遣会社であるという点です。
このため、派遣先でのプロジェクトが終了しても、派遣会社との雇用契約は継続します。次の派遣先が決まるまでの待機期間中も給与が支払われるため、収入が途切れる心配がないのが大きな特徴です。
常用型派遣と無期雇用派遣は同じもの
「常用型派遣」と「無期雇用派遣」という二つの言葉を耳にすることがありますが、これらは実質的に同じものを指す言葉として使われています。常用型派遣が正式な呼び方の一つであり、無期雇用派遣は働き方の特徴(期間の定めのない雇用)を分かりやすく表現した通称と捉えて差し支えありません。この記事では、常用型派遣という言葉で統一して解説を進めます。
登録型派遣との比較
一般的に「派遣」と聞いてイメージされることが多いのは「登録型派遣」です。この二つの働き方の違いを理解することが、常用型派遣の本質を掴む鍵となります。
常用型派遣と正社員の決定的な違いとは?
常用型派遣は派遣会社との間で「無期雇用」契約を結ぶため、一見すると正社員に近い安定した働き方のように思えます。しかし、派遣先企業に直接雇用される「正社員」とは、待遇やキャリアにおいて決定的な違いが存在します。
雇用主と帰属意識の違い
最も大きな違いは、雇用主が誰かという点です。常用型派遣の雇用主はあくまで派遣会社です。一方で、正社員は実際に働く企業に直接雇用されます。
この違いは、日々の業務における立場や帰属意識に大きく影響します。正社員であれば自社の成長に貢献するという意識を持ちやすいですが、常用型派遣は派遣先から見れば「外部の人間」です。そのため、重要な会議への参加や責任ある業務を任される機会は少なくなりがちで、疎外感や「自分はこの会社の一員ではない」という感覚を抱きやすい傾向があります。
待遇と昇進・昇給の違い
給与体系にも差があります。常用型派遣は月給制で安定していますが、昇給の機会は限られています。多くの場合、派遣料金が固定されているため、個人の成果が給与に反映されにくい構造になっています。
一方、正社員は企業の評価制度に基づいて昇給や昇進の機会があり、長期的にキャリアを形成していくことが可能です。福利厚生においても、住宅手当や家族手当など、派遣先独自の充実した制度を利用できないケースが多く、正社員との間に格差を感じる場面は少なくありません。
要するに、常用型派遣は「雇用の安定」という側面だけを切り取れば正社員に似ていますが、キャリアの成長性、待遇、組織内での立場といった多くの面で、正社員とは明確に区別される存在なのです。
気になる給料とボーナス!月20万の手取りは?
常用型派遣を選ぶ上で、給料やボーナスといった金銭面は最も気になるポイントの一つです。安定した月給制が魅力ですが、その実態を詳しく見ていきましょう。
給料の相場と手取り額
常用型派遣の給料は、職種や地域、スキルによって異なりますが、未経験から始められる事務職などでは月給20万円から22万円程度が一般的な相場とされています。
では、月給20万円の場合、手取り額はいくらになるのでしょうか。ここから所得税、住民税、社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)などが天引きされるため、実際に受け取れる手取り額はおおよそ16万円から17万円程度になります。
この金額は、あくまで目安です。扶養家族の有無や住んでいる地域によって住民税額などが変わるため、多少の変動はあります。登録型派遣のように時給制で働く場合と比べて、祝日が多い月でも収入が安定するメリットはありますが、給与水準自体が特別高いわけではないことを認識しておく必要があります。
ボーナス(賞与)の実態
常用型派遣のメリットとして、ボーナスが支給される点が挙げられます。これは派遣会社の社員として雇用されるため、会社の業績や個人の評価に応じて支給されるものです。
ただし、その金額は一般企業の正社員と比較すると少ない傾向にあります。多くの場合は「寸志」程度であったり、基本給の1ヶ月分が年に1~2回支給される、といったケースがほとんどです。年収ベースで考えると、ボーナスがあることで登録型派遣よりは高くなる可能性がありますが、大きな期待は禁物です。
これらのことから、常用型派遣は「安定はしているが、高収入は望みにくい」働き方と言えます。自分の求める生活水準や将来の貯蓄計画と照らし合わせて、この給与体系で満足できるかを慎重に判断することが求められます。
3年ルール対象外でも安心できないキャリア
常用型派遣の大きなメリットとして「3年ルール」の対象外であることが頻繁に挙げられます。これは、同じ派遣先の同じ部署で3年を超えて働き続けられるという制度ですが、このメリットが必ずしも自身のキャリアにとってプラスに働くとは限りません。
3年ルールとは
まず、3年ルールについて簡単におさらいします。これは、有期雇用の登録型派遣で働く場合に適用される法律で、派遣社員の雇用の安定とキャリアアップを目的としています。原則として、派遣先の同一事業所の同一部署で働ける期間は最大3年と定められています。
常用型派遣は、派遣会社と無期雇用契約を結んでいるため、このルールの適用を受けません。そのため、気に入った派遣先があれば、3年という期間を気にすることなく、理論上は長期間働き続けることが可能です。
長期就業がもたらすキャリアの停滞
3年以上同じ職場で働けることは、一見すると安定していて良いことのように思えます。しかし、これはキャリアの停滞という大きなリスクをはらんでいます。
派遣先企業にとって、常用型派遣社員はあくまで「特定の業務を遂行するための人材」です。自社の正社員のように、将来の幹部候補として様々な経験を積ませたり、積極的にスキルアップの機会を与えたりすることは稀です。
結果として、同じ職場で何年も同じような補助的業務を続けることになりかねません。数年が経過した時に、自分には「その職場でしか通用しない限定的なスキル」しか身についていない、という事態に陥る可能性があります。年齢を重ねてから転職を考えた際に、市場価値のあるスキルが何もないことに気づき、愕然とすることもあり得るのです。
したがって、3年ルールの適用外というメリットは、裏を返せば「ぬるま湯に浸かり、キャリアアップの機会を逃し続けるリスク」と表裏一体です。この制度を過信せず、常に自身の市場価値を高める意識を持つことが不可欠です。
派遣の暗黙のルールとエンジニアが置かれる状況
どの職場にも、明文化されてはいない「暗黙のルール」が存在します。特に派遣社員という立場では、正社員との間に見えない壁や独特の慣習が存在し、それがストレスの原因となることがあります。
派遣社員が直面する暗黙のルール
派遣社員が直面しやすい暗黙のルールには、以下のようなものが挙げられます。
- 業務範囲の壁:契約で定められた業務以外のことは頼まれない、また関わらせてもらえない。
- 情報格差:社内の重要な情報や決定事項が、正社員の間だけで共有され、派遣社員には知らされない。
- 人間関係の距離感:飲み会や社内イベントに誘われなかったり、逆に断りにくかったりと、微妙な距離感がある。
- 雑務の担当:電話対応や来客対応など、本来の業務ではない雑務を率先して行うべき、という無言のプレッシャー。
これらのルールは、派遣先から「お客様」ではなく「便利な労働力」として扱われていることの表れでもあり、疎外感やモチベーションの低下に繋がりやすい問題です。
エンジニアの場合の特殊な状況
特にエンジニアのような専門職の場合、常用型派遣の立場はさらに複雑になります。エンジニアはスキルを磨き、キャリアを積み上げていくことが重要な職種です。
しかし、常用型派遣としてプロジェクトに参加する場合、任されるのは補助的なテスト業務や運用・保守など、キャリアの核心部分から外れた業務であることが少なくありません。最新技術に触れる機会や、上流工程に関わるチャンスは正社員に優先されがちです。
また、プロジェクトが終了すれば、派遣会社の都合で全く異なる技術分野や業界の職場へ異動させられる可能性もあります。これでは、一つの専門性を深めていくというエンジニアとしてのキャリアプランを描くことが非常に困難になります。
このように、常用型派遣という働き方は、特に主体的なキャリア形成を目指すエンジニアにとって、スキルアップの機会を奪い、キャリアを停滞させる大きな足かせとなる危険性をはらんでいます。
正社員を目指すなら常用型派遣はやめとけという結論
- 向いている人はごく一部?その条件を解説
- 主な常用型派遣会社一覧と選ぶ際の注意点
- 常用型派遣を辞めたいと考えた時の手順
- 万が一クビにされたらどうなるのか
- 正社員型派遣はやめとけ、と言われる背景
- まとめ:安易に選ぶ常用型派遣はやめとけ
向いている人はごく一部?その条件を解説
これまで述べてきたように、常用型派遣には多くのデメリットやリスクが存在します。そのため、全ての人におすすめできる働き方ではありません。しかし、特定の目的や状況にある人にとっては、有効な選択肢となる場合もあります。
では、どのような人が常用型派遣に向いているのでしょうか。それは、以下の条件に当てはまる、ごく一部の人に限られると考えられます。
事務職などの実務経験を短期間で積みたい若年層
アパレルや飲食など、他業種から事務職へのキャリアチェンジを目指しているものの、実務経験がないために正社員への転職が難しい、という若年層の方です。
常用型派遣を利用すれば、大手企業のオフィスなどで働きながら、ビジネスマナーやPCスキルといった基本的な事務経験を積むことができます。ただし、これはあくまで「正社員になるためのステップ」と割り切り、1~2年という期限を決めて利用することが前提です。ダラダラと続けてしまうと、前述のキャリア停滞のリスクに陥ります。
安定した収入を得ながら、特定の専門スキルを磨きたい人
フリーランスや登録型派遣では収入が不安定になることを避けつつ、特定の分野での経験を積みたいという明確な目的を持つ人です。
例えば、特定のプログラミング言語やCADのスキルを活かせる派遣先を希望し、そこで経験を積む、といったケースです。この場合も、派遣会社任せにするのではなく、自身のキャリアプランを明確に伝え、希望に沿った案件を紹介してもらえるよう主体的に動く必要があります。また、派遣先の業務だけに満足せず、自己学習を継続する姿勢が不可欠です。
言い換えれば、「安定」や「楽」だからという理由で選ぶのではなく、「将来の目標達成のための、期間限定の手段」として戦略的に活用できる人のみが、常用型派遣に向いていると言えるでしょう。
主な常用型派遣会社一覧と選ぶ際の注意点
常用型派遣という働き方を検討する場合、どの派遣会社を選ぶかが非常に重要になります。ここでは、主な常用型派遣サービスを提供している会社をいくつか紹介するとともに、選ぶ際の注意点を解説します。
常用型派遣サービスを提供している大手派遣会社
多くの大手人材派遣会社が、独自の名称で常用型派遣サービスを展開しています。
- スタッフサービス:「ミラエール」
- リクルートスタッフィング:「キャリアウィンク」
- パーソルテンプスタッフ:「ファンタブル」
- アデコ:「キャリアシード」「ハケン2.5」
- マンパワーグループ:「エムシャイン」
- マイナビワークス:「マイナビキャリレーション」
これらのサービスは、主に未経験から事務職を目指す若年層をターゲットにしていることが多いのが特徴です。
会社選びで失敗しないための注意点
会社を選ぶ際には、単に知名度だけで決めるのではなく、以下のポイントを必ず確認してください。
1. 派遣先への直接雇用に対するスタンス
派遣会社によって、派遣社員が派遣先で直接雇用されること(正社員化)に対する考え方が大きく異なります。例えば、パーソルテンプスタッフの「ファンタブル」は、派遣先での直接雇用を「卒業」として積極的に支援する方針を打ち出しています。一方で、自社で優秀な人材を抱え込みたいという方針が強く、直接雇用に消極的な会社も存在します。将来的に正社員を目指すのであれば、このスタンスは非常に重要な判断基準となります。
2. 研修制度の内容
特に未経験から挑戦する場合、研修制度の充実度は必ずチェックすべきです。基本的なPCスキル研修だけでなく、自身のキャリアプランに合った専門的なスキルを学べる講座が用意されているか、またそれが有料なのか無料なのかも確認しましょう。
3. 給与・賞与・福利厚生の詳細
募集要項に書かれている月給だけでなく、昇給の基準、賞与の具体的な支給実績(何ヶ月分か)、交通費の支給条件、利用できる福利厚生の詳細などを、面接の際に具体的に質問することが大切です。「安定」を求めて選んだにもかかわらず、手当などが不十分で、結果的に生活が苦しくなるような事態は避けなければなりません。
これらの点を総合的に比較検討し、自分のキャリアプランに最も合致した派遣会社を慎重に選ぶことが、後悔しないための鍵となります。
常用型派遣を辞めたいと考えた時の手順
常用型派遣として働き始めたものの、「話が違う」「このままでは将来が不安だ」と感じ、退職を考えるケースは少なくありません。しかし、常用型派遣は登録型派遣と異なり、退職が簡単ではないという実態があります。
なぜ退職が難しいのか?
理由は、派遣会社と「期間の定めのない雇用契約」を結んでいるためです。法律上は、民法第627条に基づき、退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば契約は終了します。
しかし、派遣会社側からすれば、あなたを雇用し続けることで利益を得ているため、退職を申し出ると強い引き留めに遭うことがほとんどです。「次の派遣先も決まっている」「今辞められると派遣先に迷惑がかかる」といった理由で、説得されることが予想されます。
スムーズに退職するための手順
強い引き留めを振り切り、できるだけ円満に退職するためには、計画的な手順を踏むことが重要です。
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退職の意思を固め、退職希望日を決める まずは「なぜ辞めたいのか」「辞めてどうしたいのか」を自分の中で明確にし、強い意思を持つことが大切です。その上で、具体的な退職希望日を設定します。
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派遣会社の担当者に早めに伝える 法律上は2週間前ですが、社会的なマナーや引き継ぎを考慮すると、退職希望日の1ヶ月~3ヶ月前には、まず派遣会社の担当営業に退職の意向を伝えるのが理想的です。特に、派遣先との契約更新のタイミングに合わせると、話が進みやすくなります。
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退職理由を明確に伝える 引き留められた際に、「人間関係が悪い」「仕事が合わない」といった不満だけを伝えると、「次の職場では改善します」と切り返される可能性があります。「正社員としてキャリアアップを目指したい」など、派遣という働き方では実現不可能な、前向きで具体的なキャリアプランを理由として伝えるのが効果的です。
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退職届を提出する 口頭で伝えた後、会社の規定に従って正式な退職届を提出します。もし担当者が受け取らないなどのトラブルがあれば、内容証明郵便で送付するという方法もあります。
このように、常用型派遣を辞めるには強い意志と計画性が必要です。「辞めにくい」という特性を理解した上で、慎重に行動することが求められます。
万が一クビにされたらどうなるのか
常用型派遣は無期雇用契約のため、「安定している」「クビになりにくい」というイメージがあります。確かに、登録型派遣のように派遣先との契約が終了したことを理由に即座に雇用を失う「派遣切り」はありません。しかし、絶対に解雇されないわけではありません。
常用型派遣における「解雇」とは
常用型派遣の社員が解雇される(クビになる)ケースは、一般企業の正社員が解雇される場合と同様に、非常に限定的です。労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合の解雇は無効とされています。
したがって、単に「仕事のパフォーマンスが低い」「派遣先からの評判が良くない」といった理由だけで、即座に解雇されることはありません。解雇が有効となるのは、以下のような重大なケースに限られます。
- 重大な経歴詐称が発覚した場合
- 正当な理由なく長期間の無断欠勤を続けた場合
- 犯罪行為など、会社の信用を著しく失墜させる行為があった場合
- 会社の経営状況が著しく悪化し、人員整理が避けられない場合(整理解雇)
解雇に至る前のプロセス
通常、解雇に至る前には、派遣会社から複数回にわたる注意や指導、改善命令が出されます。それでも改善が見られない場合に、最終手段として解雇が検討されることになります。
また、派遣先からの評価が著しく低い場合や、次の派遣先が全く見つからない状況が長期間続いた場合、派遣会社から退職を促される「退職勧奨」が行われる可能性はあります。これはあくまで「お願い」であり、応じる義務はありませんが、会社に居づらくなるという精神的な負担は大きいでしょう。
要するに、常用型派遣は法的に強く守られており、簡単にはクビになりません。しかし、それは「何をしても大丈夫」ということではなく、社会人としての最低限の責務を果たすことが大前提となります。万が一の事態を過度に恐れる必要はありませんが、安定は自身の勤務態度の上に成り立つものであることを忘れてはいけません。
正社員型派遣はやめとけと言われる背景
「正社員型派遣」という言葉も、常用型派遣とほぼ同義で使われます。派遣会社の正社員として雇用される、という点を強調した呼び方です。この「正社員」という言葉の響きの良さとは裏腹に、「正社員型派遣はやめとけ」という意見が根強いのには、明確な背景があります。
中途半端な立ち位置がもたらす矛盾
この働き方の最大の問題点は、派遣社員の「自由さ」と、正社員の「安定・責任」という、本来両立しにくい要素を無理に組み合わせたことによる「中途半端さ」にあります。
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正社員ではないのに、正社員のように拘束される 週5日のフルタイム勤務が基本で、勤務地や仕事内容も会社の命令に従う必要があります。登録型派遣のように「次の契約は更新しない」「しばらく休んで旅行に行く」といった自由はありません。
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派遣社員なのに、正社員のようなプレッシャーを感じる 派遣先では「派遣さん」として扱われ、重要な仕事は任されない一方で、派遣会社からは「当社の正社員なのだから」と高いパフォーマンスを求められます。この板挟みの状態で、モチベーションを維持するのは非常に困難です。
労働者ではなく派遣会社のための制度?
この制度が広まった背景には、派遣会社が優秀な人材を他社に流出させず、自社に囲い込みたいという経営的な狙いがあります。労働者に安定した給与を支払うことで、派遣会社もまた、安定したマージン(利益)を得ることができるのです。
言ってしまえば、労働者のキャリア形成を第一に考えた制度というよりは、派遣会社の事業を安定させるための側面が強いと言えます。その結果、労働者はキャリアも給与も頭打ちになりやすく、年齢を重ねるごとに「このままでいいのか」という焦りを感じることになります。
結局のところ、多くの人が最終的に目指すのは「企業の正社員」です。それならば、初めから正社員としての転職活動に全力を注ぐ方が、よほど効率的で将来性がある、というのが「正社員型派遣はやめとけ」と言われる核心的な理由なのです。
まとめ:安易に選ぶ常用型派遣はやめとけ
この記事では、常用型派遣という働き方の実態について、多角的に解説してきました。
最後に、なぜ安易にこの働き方を選ぶべきではないのか、その要点をまとめます。
- 常用型派遣と無期雇用派遣は実質的に同じ意味で使われる
- 雇用主はあくまで派遣会社であり、派遣先の正社員ではない
- 登録型派遣と違い、待機期間中も給与が支払われる安定性がある
- 給与水準は高くなく、ボーナスも一般企業の正社員より少ない傾向
- 月給20万円の場合、手取り額は16万円~17万円が目安
- 3年ルールの適用外だが、キャリアが停滞するリスクと隣り合わせ
- 仕事内容や勤務地を自分で選ぶ自由はほとんどない
- 派遣先では「外部の人間」として扱われ、疎外感を感じやすい
- 責任ある業務を任されにくく、スキルアップが限定的になる
- 特に専門職であるエンジニアはキャリア形成が困難になりがち
- 正社員ではないのにフルタイムで拘束され、中途半端な立場に陥る
- 退職したくても、強い引き留めに遭い、辞めにくい実態がある
- 簡単にはクビにならないが、それは最低限の勤務態度が前提
- 向いているのは「実務経験を積むためのステップ」と割り切れる若年層などごく一部
- 正社員を目指すのであれば、遠回りで非効率な選択肢となり得る