「外交官はやめとけ」という言葉で検索されたあなたは、華やかなイメージの裏にある厳しい現実や、外交官というキャリアの真実について、深く知りたいと考えているのではないでしょうか。
外交官の仕事は本当に楽しいのか、それとも多くの人が辞めたいと感じるほど激務なのか。噂されるような金持ちで高い年収の暮らしの実態や、外交官になるには英検何級レベルの語学力、そしてどの出身大学が有利なのかといった具体的な情報も気になるところでしょう。
さらに、どんな人が外交官に向いている人なのか、女性がキャリアを築く上での課題、そして外交官が捕まらない理由とされる特権の真実まで、様々な疑問が頭をよぎるかもしれません。
この記事では、そうしたあなたの疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。
この記事を読むことで、以下の4つのポイントについて深く理解できます。
- 外交官はやめとけと言われる背景にある過酷な労働環境や私生活での実態
- 外交官に求められる資質、必要な語学力や学歴に関する客観的な情報
- 給与や年収の実態と、世間のイメージとの間に存在するギャップ
- 厳しいだけではない、外交官ならではのやりがいや楽しさ、そして特権
外交官はやめとけと言われる5つの現実
- 外交官の激務は想像を絶するレベル
- 心身が限界で辞めたいと感じる現実
- 外交官の暮らしは引越し貧乏との戦い
- 金持ちという噂と実態年収のギャップ
- 女性外交官が直面するキャリアの壁
外交官の激務は想像を絶するレベル
外交官の仕事が「激務」であることは、多くの現役職員や経験者が口を揃えて指摘する事実です。特に、東京の外務省本省で勤務する場合、その労働環境は過酷を極めます。
例えば、国会が開かれている期間は、議員からの質問準備や答弁作成のために、連日深夜までの残業が常態化します。タクシーでの帰宅や、省内に泊まり込むことも珍しいことではありません。また、G7やG20といった大規模な国際会議が開催される際には、準備段階から開催期間中、そして事後処理に至るまで、膨大な業務量に追われることになります。
海外の日本大使館や領事館での勤務も決して楽ではありません。担当する国や地域でテロや大規模災害、邦人が関わる重大事件が発生すれば、昼夜を問わず24時間体制での対応が求められます。日本との時差がある国では、本省との連絡調整のために深夜や早朝の勤務が必要になることも日常茶飯事です。
このように、常に緊張感を強いられ、予測不能な事態に即応しなければならない点が、外交官の仕事の厳しさを物語っています。
心身が限界で辞めたいと感じる現実
前述の通り、外交官の激務は心身に大きな負担をかけます。その結果、心身の健康を損ない、キャリアの途中で「辞めたい」と真剣に考える、あるいは実際に退職の道を選ぶ人が少なくありません。
ある若手職員の体験談では、入省当初はやりがいに満ちていたものの、1年目の冬頃から徐々に心身のバランスを崩し、休職と復職を繰り返した末に退職を決意したと語られています。このケースでは、過酷な残業だけが理由ではなく、「仕事のやりがいや報酬よりも、そのために費やす労力や心身の消耗が大きすぎる」と感じたことが最終的な決断につながりました。
このように、高い志と能力を持って入省した人材であっても、絶え間ないプレッシャーと過重労働の中で自身の限界を感じ、キャリアを断念せざるを得ない状況に追い込まれることがあります。
外交官という職業は、個人の時間や健康といった、人生における重要な要素を犠牲にしなければ成り立たない側面を持っていると言えるかもしれません。
外交官の暮らしは引越し貧乏との戦い
外交官のキャリアは、おおむね2年から3年ごとに海外の在外公館と日本の本省を行き来する転勤の連続です。一生の半分近くを海外で過ごすとも言われ、この特殊なライフスタイルは「暮らし」の面に大きな影響を及ぼします。
特に深刻なのが、経済的な負担です。赴任のたびに家財道具を揃え、車を購入し、そして離任する際には二束三文で手放すというサイクルを繰り返すため、「ひっこし貧乏」という言葉が存在するほどです。民間の海外駐在員であれば会社が負担してくれるような費用も、自己負担となるケースが多くあります。
また、赴任先が開発途上国の場合、生活環境は極めて劣悪なことがあります。停電や断水は日常的で、治安の悪さから自由な外出が制限されることも珍しくありません。医療水準も低いため、病気や怪我をしても満足な治療を受けられず、健康管理休暇を利用して一時帰国するまで我慢しなければならない状況もあります。
家族を帯同する場合、配偶者のキャリア中断や子供の教育問題も深刻な課題となります。
このように、常に不安定で制約の多い生活環境は、外交官本人だけでなく、家族にとっても大きなストレス要因です。
金持ちという噂と実態年収のギャップ
外交官は「金持ち」というイメージを持たれがちですが、その実態は少し複雑です。確かに、海外勤務の際には「在勤基本手当」や「住居手当」などが支給されるため、額面上の年収は高くなります。
しかし、これが必ずしも豊かな生活を保証するわけではありません。
人事院の調査によると、外務省職員の平均給与月額は約40万5千円、平均年収に換算すると約668万円となり、民間企業の平均を上回ります。しかし、この数字には海外での高額な手当が含まれていることを考慮する必要があります。
一方で、海外での生活は日本よりも物価が高い場合が多く、特に先進国の都市部では生活費がかさみます。前述の通り、引っ越しに伴う出費も大きく、子女教育費なども含めると、持ち出しは決して少なくありません。
ある職員は、後進国勤務の30代後半で、各種手当を含めても年収は800万円程度であり、その能力があれば民間の外資系企業で活躍する方が遥かに高い収入を得られる、と指摘しています。
したがって、金持ちというイメージは、高額な在外手当がもたらす一面的なものであり、その裏には特有の出費や負担が存在することを理解しておく必要があります。
女性外交官が直面するキャリアの壁
近年、女性外交官の活躍は増えていますが、キャリアを継続していく上で特有の課題に直面することも事実です。その最大の要因は、出産や育児といったライフイベントと、外交官という仕事の過酷さとの両立の難しさです。
ある女性職員は、育児をしながらフルタイムで勤務しているものの、保育園の送迎時間に間に合わせるために駆け足で退庁し、それでも終わらない業務を週末に出勤してこなしている、という実情を語っています。時間的な制約がある中で、出産前と同じように業務をこなすことは極めて困難です。
このため、その職員は後輩へのアドバイスとして、「出産前に大変な仕事や忙しい部署を積極的に経験し、自身の仕事の幅を広げておくことが重要だ」と述べています。育児などで時間的制約がかかる時期が来ることを見越して、若いうちにキャリアの「貯金」を作っておくという考え方です。
日本社会全体で働き方改革が叫ばれる中、霞が関、とりわけ外務省の長時間労働文化は依然として根強く残っています。女性が安心してキャリアを継続するためには、組織全体の働き方の変革が不可欠であり、道半ばであるのが現状と言えるでしょう。
外交官はやめとけ論の先にある適性と実像
- それでも外交官が楽しいと感じる瞬間
- 外交官に向いている人の持つ意外な資質
- なるには英検何級レベルの語学力が必要?
- 外交官の出身大学はどこが多いのか
- 外交官が捕まらない理由と外交特権
- 外交官はやめとけの総括
それでも外交官が楽しいと感じる瞬間
これまでの厳しい側面とは裏腹に、外交官の仕事には他では決して味わうことのできない、大きなやりがいや楽しさが存在します。多くの職員が、その魅力に惹かれて激務を乗り越えています。
世界を舞台にしたダイナミックな業務
在外公館での勤務は、外交官としての醍醐味を最も感じられる機会の一つです。現地の政府関係者と渡り合い、日本の国益のために交渉を行うこと。総理大臣や皇族といった要人が自国を訪問する際に、その歴史的なイベントの最前線でサポートをすること。これらは、国家の代表として働くからこそ得られる、かけがえのない経験です。
知的好奇心を満たす仕事
国際政治や地政学、各国の経済情勢の分析といった業務は、知的な探求心を持つ人にとっては尽きることのない魅力があります。また、総理大臣や外務大臣の通訳として首脳会談に同席したり、天皇皇后両陛下にご進講したりする機会も、一部の職員には与えられます。歴史が動く瞬間に立ち会い、自身の語学力や知識を最大限に活かせた時の達成感は、何物にも代えがたいものです。
多様な文化と人との出会い
海外での研修や勤務を通じて、現地の友人や他国の外交官と深い人間関係を築けることも大きな魅力です。日本では出会えないような多様なバックグラウンドを持つ人々と交流し、共に学び、働く経験は、人生を豊かにしてくれます。また、広報文化活動として、日本の文化を世界に広める仕事に携わることも、大きな喜びにつながります。
外交官に向いている人の持つ意外な資質
外交官に求められるのは、単に語学が堪能であることだけではありません。むしろ、語学力は前提条件であり、それ以外に多様な資質が求められます。
知的好奇心と分析力
目まぐるしく変化する国際情勢を的確に把握し、その背景にある歴史や文化、政治経済の力学を読み解く深い洞察力と分析力が必要です。「なぜこうなっているのか」を常に問い続ける、尽きることのない知的好奇心が全ての土台となります。
高いコミュニケーション能力と交渉力
外交の現場は、利害が複雑に絡み合う国と国との交渉の場です。相手の文化や価値観を尊重しつつ、日本の立場を明確に主張し、粘り強く合意形成を図る高度なコミュニケーション能力と交渉力が不可欠です。パーティーや会食などの社交の場を円滑にこなし、人脈を築いていく社交性も同様に大切です。
タフな精神力と身体的な強さ
前述の通り、外交官の仕事は激務であり、赴任先の環境も厳しいことが少なくありません。どのような環境にも適応し、強いプレッシャーの中で冷静に職務を遂行できる、強靭な精神力と身体的なタフさが求められます。ストレス耐性の高さは、この仕事を長く続ける上での鍵となります。
なるには英検何級レベルの語学力が必要?
外交官を目指す上で、高い語学力が必要不可欠であることは言うまでもありません。具体的にどの程度のレベルが求められるのか、指標となる資格試験を基に解説します。
外務省専門職員採用試験では、願書提出時にTOEFLまたはIELTSのスコア提出が推奨されており、ハイスコアは語学能力を示すものとして評価されます。例えば、TOEFL iBTで100点以上、IELTSで7.0以上が望ましいとされています。
ただし、重要なのはスコアそのものよりも、実際に使える語学力です。採用試験では、外国語での面接や、和文英訳・英文和訳の記述試験があり、実践的なコミュニケーション能力や表現力が試されます。
また、外務省に入省すると、英語に加えてもう一つの外国語を専門言語として習得することになります。このため、英語力だけでなく、新しい言語を学ぶ意欲と適性も同じくらい大切です。
語学力は入省後の研修でも十分に伸ばすことができるため、採用段階では語学力以外のポテンシャルも総合的に評価されます。
外交官の出身大学はどこが多いのか
外交官の採用において、出身大学名だけで合否が決まることはありません。あくまで国家公務員試験の成績と、その後の面接での評価によって総合的に判断されます。しかし、結果として特定の大学からの採用者が多くなる傾向があるのも事実です。
国家公務員総合職試験を経て外務省に入省する、いわゆる「キャリア外交官」の場合、最も多いのは東京大学の出身者です。例年、合格者の半数以上を占めることもあります。それに次いで、京都大学、一橋大学、慶應義塾大学、早稲田大学といった難関大学の出身者が多く名を連ねています。
一方で、語学や地域のスペシャリストである外務省専門職員の場合は、東京外国語大学や大阪大学(旧大阪外国語大学)など、語学教育に定評のある大学の出身者も多く活躍しています。
重要なのは、どの大学に在籍しているかということよりも、外交官になるという強い意志を持って、早期から試験対策を始めることです。
法学部や経済学部、国際関係学部などで専門知識を深めることは有利に働く可能性がありますが、どの学部にいても試験に合格することは可能です。
外交官が捕まらない理由と外交特権
「外交官は交通違反をしても捕まらない」といった話を聞いたことがあるかもしれません。これは「外交特権」と呼ばれる、国際法に基づいた特別な権利によるものです。
この特権は、1961年に採択された「外交関係に関するウィーン条約」によって定められています。主な目的は、外交官が派遣された国(接受国)からの圧力や干渉を受けずに、独立して公務を遂行できるように保証することです。
不可侵権と刑事裁判権からの免除
外交特権の中でも特に強力なのが、「身体の不可侵」と「刑事裁判権からの免除」です。これにより、外交官は原則として接受国の警察に逮捕・拘禁されることはありません。また、その国の法律に違反した場合でも、刑事裁判にかけられることを免除されます。
ただし、これは「何をしても許される」という意味ではありません。外交官には、接受国の法令を尊重する義務があります。重大な違反行為があった場合、日本政府(派遣国)が外交官としての特権を放棄して裁判を受けさせたり、本国に召還したりする措置が取られます。
あくまで、国家間の円滑な外交関係を維持するための制度であり、無制限の特権ではないことを理解しておくことが大切です。
外交官はやめとけの総括
この記事を通じて、「外交官はやめとけ」という言葉の裏にある多面的な実像が見えてきたのではないでしょうか。
最後に、本記事で解説した重要なポイントをまとめます。
- 外交官の仕事は心身をすり減らすほどの激務である
- 特に本省勤務では深夜残業や休日出勤が常態化する
- 危機管理対応では24時間体制が求められる
- 過労で心身の健康を損ない辞める人も少なくない
- 2~3年ごとの海外転勤で生活基盤が安定しない
- 「ひっこし貧乏」と呼ばれる経済的負担がある
- 途上国での生活はインフラや治安、医療面で困難が伴う
- 女性は出産や育児とキャリアの両立に大きな壁がある
- 年収は高いが、労働強度や犠牲に見合わないと感じる声もある
- 一方で、国を代表して働く大きなやりがいと楽しさがある
- 国際会議や首脳会談など歴史の現場に立ち会える
- 高い知的好奇心と強靭な精神力が求められる
- 語学力に加え、交渉力や適応力が不可欠である
- ウィーン条約に基づく外交特権が認められている
- 「外交官はやめとけ」とは、生半可な覚悟では務まらないという警鐘である