機関士はやめとけという言葉を耳にして、不安や疑問を感じているのではないでしょうか。
インターネットで検索すると、機関士の仕事内容がきついという意見や、船内でのいじめ、さらには短命であるといった気になる情報が見つかるかもしれません。
また、高額な年収や船員年収ランキングの実態、取得すべき資格、そして船乗りという職業が結婚に反対されやすいのかといった、将来に関わるデメリットについても知りたいと考えていることでしょう。
評判の悪い乗ってはいけない船会社リストの存在も、失敗や後悔を避けたいあなたにとっては重要な関心事であると考えられます。
この記事では、そうした疑問や不安を解消するため、機関士という仕事のリアルな実態を多角的に掘り下げていきます。
- 機関士はやめとけと言われる具体的な理由
- 厳しい労働環境を上回る高収入や長期休暇などのメリット
- 機関士という仕事への向き不向きを判断するポイント
- 後悔しないために知っておくべき船会社の選び方
機関士はやめとけと言われる5つのデメリット
- 仕事きついと言われる労働環境の実態
- 船員の閉鎖的な人間関係といじめ問題
- 船員が短命と言われてしまう健康リスク
- 船乗りとの結婚は反対されやすいのか
- 評判の悪い乗ってはいけない船会社リスト
仕事きついと言われる労働環境の実態
機関士の仕事がきついと言われる主な理由は、その特殊で過酷な労働環境にあります。陸上の仕事とは異なり、船員の勤務は24時間体制で、一度航海に出ると数ヶ月間は陸に戻れない生活が続きます。
航海中は「ワッチ」と呼ばれる当直勤務が基本です。これは1日を3交代制(4時間勤務・8時間休憩を2回)で担当するもので、生活リズムが不規則になりがちです。特に、当直が終わった直後に港での荷役作業が始まると、まとまった休息時間を確保することが難しくなります。船によっては、荷役作業が1週間続くこともあり、肉体的な疲労は相当なものになると考えられます。
また、常にエンジンや発電機が稼働している機関室は、高温かつ大きな騒音に包まれた空間です。このような環境での作業は、体力を消耗させます。さらに、海が荒れて船体が大きく揺れる状況でも、職務を遂行しなくてはなりません。逃げ場のない環境で、常に危険と隣り合わせであるという緊張感が、精神的な負担となることもあります。
これらのことから、規則正しい生活を望む人や、体力に自信がない人にとっては、機関士の仕事は非常に厳しいものに感じられるでしょう。
船員の閉鎖的な人間関係といじめ問題
船という職場は、陸から隔絶された閉鎖的な空間です。乗組員は数ヶ月もの間、同じメンバーと24時間顔を合わせながら生活を共にします。このため、人間関係が一度こじれると、逃げ場がなく精神的に追い詰められやすい環境と言えます。
船内では、船長を頂点とした厳格な縦社会が形成されていることが多く、「上司の言うことは絶対」という古い風潮が根強く残っている船も少なくありません。「仕事は怒鳴られて覚えるもの」といった昔ながらの考え方を持つ上司や、世代間の価値観の違いから、若手船員がストレスを感じる場面も多いようです。
実際に、挨拶をしても無視される、些細なミスで大勢の前で人格を否定されるような説教を受ける、といった経験談も聞かれます。悪質なケースでは、暴力や、飲み会への参加を強要されるなどのパワーハラスメント、陰口や嫌がらせといったいじめに発展することもあります。
もちろん、全ての船の人間関係が悪いわけではなく、チームワークが良く和やかな雰囲気の職場もたくさんあります。しかし、もし性格の合わない人や高圧的な上司がいる船に乗ってしまうと、その乗船期間は精神的に非常につらいものになる可能性があります。
人間関係の問題は、機関士を含む船員が仕事を辞める最も大きな理由の一つになっています。
船員が短命と言われてしまう健康リスク
船乗りは短命という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これにはいくつかの要因が関係していると考えられます。機関士の仕事には、健康を害する可能性のあるリスクが複数存在します。
第一に、不規則な生活リズムが挙げられます。前述の通り、交代制の当直勤務や深夜に及ぶ荷役作業は、体内時計を狂わせ、慢性的な睡眠不足を引き起こす原因となります。質の高い睡眠を確保できない生活が続けば、自律神経の乱れや免疫力の低下につながる恐れがあります。
第二に、食生活の偏りです。船上では限られた食材で食事を賄うため、栄養バランスが偏りがちになることがあります。また、航海中のストレスから、飲酒量が増えたり、間食が多くなったりする人もいます。
第三に、精神的なストレスです。閉鎖された空間での人間関係や、家族と長期間会えない孤独感、常に危険と隣り合わせであるというプレッシャーは、心身に大きな影響を与えます。これらのストレスが、高血圧や心臓疾患などの生活習慣病のリスクを高める可能性は否定できません。
もちろん、現在の船舶は居住環境が改善されており、健康管理への意識も高まっています。しかし、職務の性質上、陸上の仕事に比べて健康を維持するための自己管理が一層大切になる職業であることは間違いありません。
船乗りとの結婚は反対されやすいのか
船乗りという職業は、その特殊な勤務形態から、結婚相手やその家族から理解を得にくい場合があります。長期間家を留守にすることが、結婚において大きなハードルとなるのです。
最も大きな懸念点は、パートナーの孤独とワンオペ育児の問題です。
夫が数ヶ月単位で不在になるため、妻は一人で家事や育つ子の面倒を見なければなりません。子どもの急な病気や学校行事など、いざという時に頼れる夫がそばにいない状況は、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。
このため、結婚を考える際には、パートナーの実家の近くに住むなど、周囲のサポートを得られる環境を整えることが一つの鍵となります。
また、夫がいないことで防犯面での不安を感じたり、夫婦間のコミュニケーションが不足しがちになったりする点もデメリットとして挙げられます。
一方で、メリットも存在します。夫が休暇で帰ってきた際には、新鮮な気持ちで向き合えるため、マンネリ化しにくいという意見があります。また、乗船中は生活費がほとんどかからないため貯蓄しやすく、経済的な安定を得やすい点は大きな魅力です。
このように、船乗りとの結婚は「亭主元気で留守がいい」と割り切れるか、あるいはパートナーが不在の間の困難を乗り越えられるだけの精神的な強さや、周囲の協力体制があるかどうかにかかっています。
これらの点を十分に話し合い、理解を得ることができなければ、結婚に反対される可能性はあると言えるでしょう。
評判の悪い乗ってはいけない船会社リスト
「評判の悪い乗ってはいけない船会社リスト」というものが具体的に存在するわけではありません。
しかし、船員の間で「あの会社は避けた方が良い」と噂される、いわゆる「ブラック」な船会社が存在するのは事実です。
後悔しないためには、求人情報を見る際にいくつかの注意点があります。
頻繁に求人を出す会社
常に人手不足であることの裏返しと考えられます。船内の労働環境が過酷であったり、人間関係に問題があったりして、船員がすぐに辞めてしまうため、常に求人を出さざるを得ない状況なのかもしれません。
給与が極端に高い、または安い会社
相場よりも極端に給与が高い場合は、それだけ人が集まらない理由(例えば、非常に忙しい、危険な航路が多いなど)が隠されている可能性があります。逆に、給与が安すぎる会社は、船員への待遇を軽視している体質がうかがえます。
求人情報や面接時の対応
会社の顔である採用担当者の電話対応が高圧的であったり、求人票に会社名を記載していなかったりする会社は注意が必要です。また、面接時に休暇制度や給与体系(休暇中の給与、住民税の扱いなど)について曖昧な説明しかしない会社も、入社後にトラブルになる可能性があります。
会社の情報を確認する
会社のホームページがない、または非常に簡素な作りの場合、経営体質が古い可能性があります。また、会社名をインターネットで検索し、過去に重大な海難事故を起こしていないかを確認することも大切です。事故報告書が公開されている場合、その内容から会社の安全管理に対する意識を推し量ることができます。
これらのポイントを踏まえ、船の見学を希望して実際の職場環境や船員の雰囲気を確かめるなど、慎重に会社を選ぶことが、良い船員キャリアを築く上で不可欠です。
それでも機関士はやめとけと言い切れない理由と実情
- 機関士の具体的な仕事内容
- 船乗りになるために必須の資格
- 気になる機関士のリアルな年収
- 船員年収ランキングで見る給与水準
- 最終判断の前に知るべきこと
- 機関士はやめとけという意見の総括
機関士の具体的な仕事内容
機関士は、船の心臓部であるエンジン(主機関)や、船内の電気を供給する発電機、ボイラーといった多種多様な機械の運転と保守管理を担当する専門職です。船が安全かつ効率的に航行するために、まさに「縁の下の力持ち」として不可欠な存在です。
航海中の主な仕事は、機関制御室での監視業務です。モニターに表示される温度、圧力、回転数などの計測値に異常がないか常にチェックします。それに加えて、定期的に高温多湿の機関室内を巡回し、機械の音や振動、匂いなどに異常がないかを五感を使って確認します。万が一、故障や不具合を発見した場合は、迅速に応急処置を施し、原因を究明して機関長に報告します。
港に停泊している間も、機関士の仕事は続きます。次の航海に備えて、エンジンや各機器のメンテナンス、部品交換、清掃作業を行います。また、燃料や潤滑油、清水などの補給作業の管理も重要な職務の一つです。
これらの他にも、船内生活に必要な冷凍機や空調設備、荷役に使用する機械など、船に搭載されているあらゆる機械が機関士の管理対象となります。高度な専門知識と技術、そして船の安全を預かるという強い責任感が求められる、やりがいの大きな仕事です。
船乗りになるために必須の資格
機関士として船に乗るためには、「海技士(機関)」という国家資格が必須です。この資格がなければ、役職員として船のエンジンを管理・操作することはできません。
海技士免許は、第一級から第六級まで等級が分かれており、数字が小さいほど上位の資格となります。運航する船の大きさ(総トン数)や航行区域(近海か遠洋かなど)、そして機関の出力によって、必要とされる免許の等級が決まります。三等機関士、二等機関士、そして機関部の責任者である機関長へとキャリアアップしていくためには、より上級の免許を取得していく必要があります。
この国家試験を受験するためには、一定期間の「乗船履歴(実際に船に乗って働いた経験)」が求められます。このため、機関士になるための一般的なルートは、海事系の大学や商船高等専門学校、海上技術学校・短期大学校といった教育機関で専門知識を学ぶことです。
これらの学校では、座学に加えて、練習船などで数ヶ月から1年程度の乗船実習が行われ、卒業することで筆記試験が免除されたり、受験に必要な乗船履歴を得たりすることができます。
全くの未経験から目指す場合は、まず部員として船に乗り込んで乗船履歴を積みながら独学で六級海技士を目指すか、未経験者向けの養成講習を受講して資格取得を目指す道があります。
気になる機関士のリアルな年収
機関士の年収は、その専門性や過酷な労働環境を反映し、陸上の同年代の平均と比較して高い水準にあります。ただし、所属する会社や船の種類(内航船か外航船か)、役職、そして乗船経験によって大きく変動します。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、船舶機関士の平均年収は約467万円とされていますが、これはあくまで平均値です。実際には、経験を積み、資格の等級を上げて役職が上がるにつれて、収入は大きく増加します。
以下は、内航船における役職別の年収の一般的な目安です。
また、機関士の給与は基本給の他に、様々な手当が加算されることが特徴です。例えば、航海日数に応じて支払われる「航海手当」、危険物などを取り扱う船での「危険物手当」、タンクの清掃作業に対する手当などがあります。
さらに、乗船中は食費や光熱費、作業着などの生活費がほとんどかからないため、支出を大幅に抑えることができます。このため、給与の額面以上に手元にお金が残りやすく、貯蓄しやすい点も大きなメリットと言えるでしょう。
船員年収ランキングで見る給与水準
船員の給与水準は、勤務する海運会社の規模によっても大きく異なります。特に、日本郵船、商船三井、川崎汽船といった日本の大手三社に代表される外航海運会社は、業界の中でもトップクラスの年収を誇ります。
これらの大手海運会社の総合職(陸上勤務・海上勤務含む)の平均年収は、1,300万円を超える高水準です。外航船の船長や機関長クラスになると、年収1,500万円以上を得ることも珍しくありません。若手の航海士や機関士であっても、20代で年収500万~700万円、30代で一等航海士・一等機関士になれば年収1,000万円近くに達するケースもあります。
一方、国内の貨物輸送を担う内航海運業界も、陸上職に比べて給与水準は高い傾向にあります。会社の規模や運航している船の種類(タンカー、コンテナ船、フェリーなど)によって差はありますが、船員不足が深刻化しているため、人材確保のために好待遇を提示する会社が増えています。
このように、船員、特に機関士という専門職は、高いスキルと責任が求められる分、経済的には非常に恵まれた職業であると言えます。
どの会社、どの船を選ぶかによって収入は大きく変わりますが、努力と経験次第で高収入を目指せることは、この仕事の大きな魅力の一つです。
最終判断の前に知るべきこと
これまで見てきたように、機関士という仕事には厳しい側面と、それを補って余りある魅力的な側面があります。最終的に「機関士になる」という決断を下す前に、ご自身の価値観と照らし合わせて、本当に自分に合っている仕事なのかを冷静に判断することが大切です。
まず、仕事に何を求めるかを明確にしましょう。安定した収入や、まとまった長期休暇を使って趣味や旅行に没頭する生活に魅力を感じるのであれば、機関士は有力な選択肢となります。逆に、毎日家族と過ごす時間や、友人との交流、規則正しい生活リズムを何よりも優先したいのであれば、この仕事は向いていない可能性が高いです。
次に、自身の性格を客観的に分析することも必要です。閉鎖された空間で、様々な年代の人と長期間にわたって共同生活を送ることに耐えられますか。協調性を持ち、円滑なコミュニケーションを築く努力ができますか。地道な機械整備や、緊急時のトラブル対応など、プレッシャーのかかる状況でも冷静に対処できる精神力はありますか。
機関士という職業は、まさに「向き不向き」がはっきりと分かれる仕事です。インターネット上の情報や他人の意見だけで判断するのではなく、可能であれば会社見学やOB訪問などを通じて、実際に働く人の生の声を聞いてみることをお勧めします。
機関士はやめとけという意見の総括
この記事を通して、機関士はやめとけという言葉の背景にある厳しい実態と、それでも多くの人が船に乗り続ける理由である大きな魅力について解説してきました。
最終的に、この意見が全ての真実ではないと理解することが、後悔のない職業選択につながります。
以下に、本記事の要点をまとめます。
- 機関士の仕事は不規則な勤務と肉体的な負担できつい
- 閉鎖的な船内での人間関係は離職の大きな理由になり得る
- 長期間の乗船は家族との時間や健康管理に影響を与える
- 一方で、同年代の陸上職より高い年収が期待できる
- 数ヶ月単位のまとまった長期休暇は最大のメリット
- 乗船中は食費や光熱費がかからず貯蓄しやすい
- 海技士という国家資格は一生もののスキルとなる
- 船の安全運航を支える専門職としてのやりがいは大きい
- 船員不足のため売り手市場で就職先に困りにくい
- 若くして機関長に抜擢されるチャンスもある
- 「やめとけ」はデメリットを強調した一面的な意見である
- 仕事に何を求めるかという個人の価値観が最も重要
- メリットとデメリットを天秤にかけ冷静に判断する必要がある
- 協調性やストレス耐性など、性格的な向き不向きがはっきりしている
- 機関士は、人によっては最高の職業になり得る可能性を秘めている