船員はやめとけの真相｜向き不向きと後悔しない選択

「船員はやめとけ」という言葉を目にして、不安や疑問を感じていませんか。インターネット上では、船乗りの仕事に関する休みなしといった厳しい労働環境や、短命につながりかねないという噂、さらには閉鎖的な環境でのいじめといったネガティブな情報が散見されます。実際に高い離職率の背景には、深刻な辞める理由が存在するのも事実です。

また、生活面では船乗りとの結婚に反対されるケースがあることや、キャリアの面では、未経験や40代からでも挑戦できるのか、といった点も気になるところでしょう。もちろん、仕事選びで最も重要な要素の一つである給料や、具体的な年収ランキングについても知りたいはずです。評判の悪い船会社を避け、乗ってはいけない船会社リストのような情報があれば事前に確認したい、と考えるのは当然です。

この記事では、こうした船員のデメリットだけでなく、船乗りに向いている人の特徴まで、あらゆる情報を網羅的に解説します。あなたが「船員」という職業について深く理解し、後悔のない選択をするための判断材料を提供します。

船員はやめとけと言われる厳しい現実

船乗りの辞める理由と高い離職率

船員の仕事を辞める最も多い理由は、人間関係の悩みです。船という限られた空間で、世代も価値観も異なる人々と数ヶ月間、毎日顔を合わせる生活は、想像以上の精神的負担を伴うことがあります。特に、気の合わない上司や同僚がいる場合、逃げ場のない環境が大きなストレスとなるのです。

このため船員業界、特に内航船員の離職率は他の産業に比べて高い傾向にあり、大きな課題となっています。国土交通省のデータでも定着率の低さが指摘されており、特に海員学校を卒業した若年層においては、40%から50%が3年以内に離職するという厳しい現実があります。

主な辞め方としては、長期休暇中に退職の意向を伝えるケースが一般的ですが、中には次の交代要員が見つかることの難しさから、何の連絡もせずに辞めてしまう人も少なくありません。こうした背景には、次に解説するような船員特有のデメリットが深く関係しています。

休みなし？船員の過酷なデメリット

「船員は休みなし」というイメージは、完全な間違いではありません。一般的なサラリーマンのような土日祝日の固定休はなく、一度乗船すれば数ヶ月間は陸に上がれない生活が基本です。内航船で1〜3ヶ月、外航船では半年以上に及ぶこともあります。

この長期乗船がもたらすデメリットは多岐にわたります。

まず、家族や友人、恋人とは気軽に会えません。記念日や冠婚葬祭などの重要なイベントに参加できないことも多く、プライベートな人間関係の維持が難しくなります。また、沖に出れば携帯電話の電波は弱くなり、インターネット環境も万全ではないため、社会から隔絶されたような孤独感に苛まれる人もいます。

勤務体系も不規則です。24時間航行を続けるため、乗組員は交代で当直（ワッチ）勤務にあたります。例えば「4時間勤務して8時間休憩」というサイクルが基本ですが、休憩中に荷物の積み下ろし（荷役）作業が入ることも頻繁にあり、まとまった睡眠時間を確保できない日も珍しくないのです。

このように、気軽にコンビニへ行ったり、友人と飲みに行ったりといった陸上では当たり前の日常から長期間切り離される生活が、船員の仕事の最も過酷な側面の一つと言えます。

閉鎖空間でのいじめや人間関係の実態

前述の通り、船員の退職理由で最も多いのが人間関係ですが、その背景には、残念ながらいじめやパワーハラスメントが存在する場合があります。船内は上意下達の傾向が強い縦社会であり、古い体質が残っている職場も少なくありません。「仕事は怒られて覚えるもの」といった考え方が根強く、新人や若手船員が精神的に追い詰められてしまうケースが見られます。

具体的には、「挨拶をしても無視される」「みんなの前で人格を否定されるような説教を受ける」といった精神的なものから、「工具で叩かれた」「タバコの火を押し付けられた」という信じがたい暴力行為まで、SNSや体験談で報告されています。お酒の席でのトラブルも多く、仕事の延長線上にある飲み会が苦痛になることもあります。

もちろん、全ての船がこのような環境であるわけではなく、良好なチームワークで運営されている船も数多く存在します。しかし、一度人間関係が悪化すると逃げ場がないのが船内生活の厳しいところです。こうした閉鎖的な環境が、いじめやパワハラを深刻化させる一因となっているのは否定できません。

船乗りは短命という噂の真相

船乗りは短命である、という話を耳にしたことがあるかもしれません。過去においては、海難事故のリスクや過酷な労働環境が原因で、船員の平均寿命が陸上勤務者に比べて短いという時代もありました。

しかし、現在では状況が大きく変わっています。航海技術の進歩や安全管理体制の強化により、海難事故の発生率は大幅に低下しました。また、船員法が改正され、労働時間の管理が厳格化されるなど、船員の健康と安全を守るための取り組みが進んでいます。

ただ、完全にリスクがなくなったわけではありません。不規則な生活や交代制勤務は、自律神経の乱れや睡眠不足につながりやすく、長期的に見れば健康への影響が懸念されます。また、揺れる船内での生活やエンジン音、娯楽の少なさからくるストレス、喫煙や飲酒に走りやすい環境なども、健康を損なう要因になり得ます。

したがって、「船乗りだから短命」と一概に言える時代ではありませんが、陸上勤務に比べて健康管理への強い自己意識が求められる職業であることは間違いないでしょう。

なぜ船乗りとの結婚は反対されるのか

船乗りという職業は、結婚を考える際にパートナーやその家族から反対されることがあります。その主な理由は、これまで述べてきた船員の働き方に起因します。

最大の懸念点は、夫が長期間家を不在にすることです。数ヶ月単位で帰宅しないため、妻は一人で家事や育児の大部分を担うことになります。特に子供が小さい時期は、ワンオペ育児の負担が非常に大きく、精神的にも体力的にも厳しい状況に置かれます。近所に頼れる親族がいなければ、その負担はさらに増大します。

また、夫の不在は、夫婦間のコミュニケーション不足やすれ違いを生む原因にもなりかねません。日々の出来事を共有したり、困った時にすぐに相談したりすることが難しく、夫婦の間に距離が生まれてしまう可能性もあります。

さらに、航海中は連絡が取りにくい時間帯も多く、何か緊急事態が起きてもすぐに駆けつけられないという不安が常につきまといます。こうした特殊な生活スタイルへの理解と、一人でも家庭を守れる精神的な強さがパートナーに求められるため、結婚に際して周囲から心配の声が上がるのです。

船員はやめとけの判断基準

船乗りの給料と最新の年収ランキング

船員の仕事が厳しい側面ばかり注目されがちですが、それを補って余りある大きな魅力が給料の高さです。特殊な労働環境であるため、給与水準は陸上の同世代に比べてかなり高い傾向にあります。

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、船員の平均年収は全職種の平均を上回っています。2021年のデータでは、内航船員の月給が30万円台後半から50万円近くになることもあり、これは陸上職の平均の1.5倍ほどに相当します。

特に、危険物輸送を行うタンカー船やガス船などは手当が厚く、給料が高くなりやすいです。また、役職や保有する海技免状の等級が上がるにつれて、収入は大きく増加します。

以下に、役職や船種による年収の目安をまとめました。これはあくまで一例であり、会社や経験によって変動します。

さらに、乗船中は食費や光熱費などの生活費がほとんどかからないため、支出を大幅に抑えることが可能です。これにより、貯金がしやすい環境であることも、船員の大きな経済的メリットと言えるでしょう。

乗ってはいけない船会社リストはあるか

残念ながら、インターネット上で「乗ってはいけない船会社リスト」として明確にまとめられたものは存在しません。しかし、避けるべき会社、いわゆる評判の悪い船会社にはいくつかの共通した特徴があり、それらを知っておくことが自分自身を守る上で非常に大切です。

求人情報や会社とのやり取りの中で、危険な兆候を察知することが可能です。例えば、給料が業界水準に比べて極端に高すぎる、あるいは安すぎる場合は注意が必要です。高すぎる給料は、それだけ労働環境が過酷であったり、人が定着しないことの裏返しであったりする可能性があります。

また、求人情報に会社名を公開していなかったり、会社の公式ホームページが存在しなかったりするケースも警戒すべきです。令和の時代に自社の情報を積極的に公開しない姿勢は、経営体質が古いままであるか、何か公開できない事情（過去の事故歴など）を抱えている可能性を示唆しています。

会社に電話をかけた際の担当者の応対も重要な判断材料です。高圧的な態度を取ったり、ビジネスマナーに欠ける応対をしたりする会社は、船内の労働環境も推して知るべし、と考えられます。しっかりとした会社であれば、将来の仲間となるかもしれない応募者に対して、誠実な対応をするはずです。

評判の悪い船会社に共通する特徴

乗ってはいけない船会社、評判の悪い船会社を避けるためには、求人情報や面接の段階で、より深くその会社の内情を探る必要があります。

求人情報の頻度と内容をチェックする

海のハローワーク（運輸局）の求人情報を定期的に観察していると、毎月のように同じ会社が求人を出していることがあります。これは、慢性的な人手不足に陥っているか、採用してもすぐに人が辞めてしまう環境である可能性が非常に高いです。人が定着しないのには、必ず理由があります。

休暇や手当の条件を確認する

面接時には、休暇制度について具体的に質問することが鍵となります。「3ヶ月乗船で1ヶ月休暇」という条件で募集していても、実際には人手不足で半年以上乗船させられる、という話は珍しくありません。休暇が規定通り取得できているか、過去の実績を尋ねてみましょう。

また、給与に関しても注意が必要です。求人票に書かれている「手取り額」が、住民税を引く前の金額であったり、ボーナスが含まれた年収を12で割っただけの金額であったりする会社も存在します。乗下船時の交通費が自己負担かどうかも、必ず確認すべきポイントです。

船の見学を申し出る

可能であれば、面接の際に「一度、船を見学させていただけませんか」と申し出てみましょう。実際に働く船の様子を見ることで、多くの情報が得られます。例えば、船体がサビだらけで手入れが行き届いていない場合、メンテナンスの時間もないほど忙しい船であると推測できます。

また、船内で働く船員たちの表情や雰囲気を直接感じることで、その会社のリアルな職場環境を垣間見ることができます。誠実な会社であれば、可能な限り見学の機会を設けてくれるはずです。

未経験や40代からでも挑戦可能か？

結論から言うと、未経験者や40代からでも船員になることは十分に可能です。船員の世界は、年齢や過去の職歴よりも、やる気や協調性が重視される傾向にあります。現在、海運業界は深刻な船員不足と高齢化に直面しており、新しい人材を積極的に求めているのが現状です。

もちろん、全くの未経験者がいきなり航海士や機関士といった役職員になることはできません。これらの職務には国家資格である「海技免状」が必要です。しかし、資格がなくても「部員」として乗船し、現場で経験を積みながら資格取得を目指す道があります。

また、未経験者が短期間で海技免状（六級）を取得するための養成講習も存在します。こうした制度を利用すれば、陸上での職務経験しかない人でも、キャリアチェンジが可能です。実際に、商社や他業種から40代で船員に転身し、活躍している人は少なくありません。

ただし、未経験からの転職は、陸上の常識が通用しない船の世界に馴染むまでが大変です。特に、誰の紹介もなく一人で飛び込む場合は、相当な覚悟と努力が求められます。このため、未経験転職者の定着率は、残念ながら低いという現実もあります。

40代で挑戦する場合は、体力面での不安もあるでしょう。しかし、これまでの社会人経験で培ったコミュニケーション能力や問題解決能力は、船内での共同生活において大きな強みとなり得ます。まずは船会社に相談し、就職の目処を立ててから研修に参加するなど、計画的に進めることが成功の鍵となります。

あなたは船乗りに向いている人か？

船員の仕事は、その特殊な環境から、向き不向きが非常にハッキリと分かれます。ここまで解説してきた厳しいデメリットを理解した上で、それでも魅力を感じるのであれば、あなたには船員の素質があるかもしれません。ここでは、船乗りに向いている人の特徴を具体的に見ていきましょう。

協調性とコミュニケーション能力

船の仕事はチームワークが全てです。エンジンを管理する機関部、船の操縦を担う甲板部、食事を作る司厨部、それぞれが連携し、お互いの命を預け合って航海しています。そのため、同僚と円滑な関係を築き、「報告・連絡・相談」を徹底できる協調性は不可欠な資質です。集団生活が苦にならない、むしろ楽しめるという人には最適な環境と言えます。

体力と精神的なタフさ

不規則な勤務や、揺れる船内での生活、時には荒天の中での作業など、船員の仕事は体力的に厳しい場面が多くあります。また、長期間にわたる閉鎖空間での生活は、精神的な強さも求められます。ストレスをうまく発散し、心身ともに健康を維持できるタフさが大切です。

責任感と向上心

広大な海の上では、小さなミスが大きな事故につながりかねません。自分の持ち場に責任を持ち、常に危険を予測しながら慎重に作業できる能力が求められます。また、海技免状という国家資格があることからも分かるように、常に新しい知識や技術を学ぶ向上心も、キャリアアップしていく上で重要な要素となります。海や船が好き、という純粋な気持ちも、困難を乗り越える大きな力になるでしょう。

総括：船員はやめとけで終わらせないために

この記事では、「船員はやめとけ」と言われる理由から、その実態、そして船員という仕事の魅力までを多角的に解説してきました。

最終的に、あなたが後悔のない選択をするための重要なポイントを以下にまとめます。