いちご農家はやめとけと言われる真相とは？現場のリアルを解説

いちご農家に憧れて「独立したい」「農的な暮らしをしたい」と考える人は少なくありませんが、「いちご農家やめとけ」と検索する人が後を絶たないのには、明確な理由があります。

華やかなイメージとは裏腹に、その現実は想像以上に過酷で、初期費用の高さや労働量の多さ、収支の不安定さといった壁が立ちはだかります。

また、「金持ち・年収」という言葉がひとり歩きする一方で、実際には長時間労働とコスト負担が重く、儲からないと感じて離脱するケースも多発しています。

パートがきついという現場の声や、一年中休みの取れないスケジュール、そして「一人では回せない」という構造的な問題も深刻です。

いちご農家の数が減少している理由には、こうした課題が複合的に絡み合っていますが、適切な準備と戦略次第で将来性を高めることも可能です。本記事では、失敗事例から学ぶリスク、収益性の実態、継続のポイントまでを丁寧に解説します。

いちご農家はやめとけ言われる真相とは

「いちご農家やめとけ」と言われる背景には、外からは見えにくい現場の厳しさがあります。

ここからは、実際にいちご農業に携わる人たちが直面しているリアルな課題について掘り下げていきます。

初期費用の負担や過酷な労働環境、人手不足、そして一年を通じて休む暇のないスケジュールまで――その過酷さの全貌をご紹介します。

いちご農家の現実は想像以上に過酷

いちご農家の仕事は、見た目の華やかさや「農業で自立」というイメージとは裏腹に、実際は非常に過酷な現場です。甘くてかわいらしい果実を育てるその裏には、緻密な管理作業と長時間の労働、そして精神的なプレッシャーがのしかかります。

まず、いちごは非常にデリケートな作物であり、栽培には繊細な気温・湿度管理が欠かせません。特にハウス栽培では、朝晩の気温差に応じた換気や加温が必要となり、天候や季節の変化によっては一日に何度も調整を行う必要があります。

この作業は年中無休に近く、休日を確保することすら難しいのが現実です。

さらに、収穫期のピークは冬から春にかけてですが、その間は早朝から夜まで収穫・選別・出荷作業に追われます。人手不足の影響でパートスタッフの確保も困難になっており、農家自身がほぼ一人で対応せざるを得ないことも多々あります。

「いちご農家は一人じゃ無理」と言われるゆえんです。重労働に加えて「商品価値の高い見た目」を保つプレッシャーもあり、心身ともに負担が大きい仕事といえるでしょう。

また、害虫や病気による被害も深刻です。わずかな管理ミスでハウス全体が壊滅状態になるリスクもあり、細心の注意を払い続けなければなりません。これにより、安定した収穫や収入を維持することが難しいという課題も浮き彫りになります。

こうした背景から、「いちご農家はやめとけ」という声が出るのも無理はありません。単なる“農的な暮らし”への憧れで始めるには、あまりにも覚悟が必要な職種です。現場のリアルを理解せずに始めると、想像以上の過酷さに押しつぶされる可能性が高いのです。

初期費用の負担が重くリスクが高い

いちご農家として新規就農を目指す際、最も大きな障壁となるのが「初期費用の高さ」です。農業と聞くと、土とタネがあれば始められると考えがちですが、いちごに関してはまったく事情が異なります。

いちご栽培は露地ではなく、ほとんどがハウス栽培です。このハウスの建設費用が非常に高額で、1棟あたり数百万円から、規模によっては1,000万円を超えることも珍しくありません。

しかも、いちごは高設ベンチと呼ばれる専用の栽培台が必要で、これに伴う水耕システムや環境制御装置なども整える必要があります。農機具や冷蔵庫、出荷設備まで含めると、初期投資だけで2,000万円以上かかるケースもあるのです。

さらに、いちごは苗づくりから始めると栽培に約10カ月の準備期間が必要で、収穫までの間に売上が立ちません。その間の生活費や運転資金を自己資金または借入でまかなう必要があり、非常に高い資金繰りリスクを抱えることになります。

加えて、天候不順や病害虫による収量減少など、予測不能なリスクが多いのもいちご農業の特徴です。特に初心者の場合、管理技術が未熟なままシーズンに入ることで収穫が不安定になり、初年度から赤字に陥るケースも少なくありません。

しかも、一度収益化に失敗すると、巨額の初期投資が重くのしかかり、短期間での撤退すら難しくなります。

このように、いちご農家は他の農業と比べても非常に高額な初期投資を必要とし、それに見合う収益を上げるには高度な技術とマーケティング力が求められます。軽い気持ちで参入すると、想像以上のリスクと負債に直面しかねません。

そのため、「いちご農家やめとけ」と警鐘を鳴らす声が後を絶たないのです。

一人ではこなせない作業量と責任

いちご農家は、規模の大小を問わず、作業量とその責任の重さにおいて「一人では到底まわらない」と言われる仕事の代表例です。実際、栽培から収穫、出荷、販売までを一手に引き受ける場合、その業務量は想像を超えます。

いちごは一年のうち、特に冬から春にかけての収穫・出荷時期にピークを迎えます。この時期には、毎日のように果実の熟度を見極めて収穫し、商品価値の高い実だけを選別、箱詰めし、市場や直売所に出荷する必要があります。

しかもいちごは日持ちがしないため、収穫から出荷までのスピードと正確性が求められます。

また、農業は自然が相手の仕事であり、想定外のトラブルが日常茶飯事です。例えば、急な気温上昇による病害発生や、ハウスのトラブル、給液システムの不具合などがあれば、即時対応しなければなりません。これらをすべて一人で行うのは極めて困難です。

さらに、作業の合間には経理や資材発注、SNSによる販促、顧客対応など経営者としての業務も待ち受けています。現代のいちご農家は、単なる作業者ではなくマルチスキルを持つ事業主でなければ務まらないのです。

結果として、体力的・精神的に一人では到底まかないきれず、家族の協力やパートの力を借りてもギリギリのラインで回している農家も少なくありません。「いちご農家はやめとけ」と言われる背景には、この“人手不足が慢性的である”という厳しい現実が横たわっています。

パートがきつい？現場の声と離職の理由

いちご農家において、パート従業員の役割は非常に大きいものの、その労働環境の厳しさから、定着率の低さが深刻な課題となっています。実際に「パートがきつい」と感じて離職する人は多く、現場からはその理由が具体的に挙がっています。

まず、いちごの収穫作業は、しゃがんだ姿勢や腰をかがめる動作を長時間続ける必要があり、特に高齢者や体力に自信のない人にとっては大きな負担になります。

最近では高設ベンチ栽培も増え、多少の改善は見られますが、それでも一日中立ちっぱなしでの作業や、繊細な手作業が求められる場面が多く、身体的なきつさは残ります。

また、出荷作業では“見た目が9割”とも言われるほど、いちごの形や色、サイズを厳しく選別しなければなりません。この選別基準が曖昧だったり、農家ごとの感覚で判断されることも多く、パートにとっては精神的なプレッシャーにつながります。

「これは合格？不合格？」という不安を毎回抱えながらの作業は、予想以上に神経を使うものです。

さらに、いちごの収穫時期は繁忙期と直結しており、短期集中で労働量が増える傾向があります。そのため、希望したシフトより長時間働かざるを得ない状況になることもあり、家庭や副業との両立が難しくなって離職するケースが少なくありません。

結果的に、労働環境や仕事内容の過酷さが、パート従業員の離職率の高さに直結しており、「人が続かないから農家も疲弊する」という悪循環が生まれています。パートの確保と定着は、いちご農家経営において避けて通れない課題となっているのです。

年間スケジュールから見る繁忙と負担

いちご農家の一年は、オフシーズンがほとんど存在しない「通年稼働型」といっても過言ではありません。年間スケジュールを見れば、その繁忙と負担の大きさが如実に表れます。

夏場（6〜8月）は苗づくりの時期であり、親株からランナーを伸ばして子苗を育成します。この段階から高い温度管理と病害虫対策が求められ、苗づくりに失敗すれば、その年の収穫全体に影響するため極めて重要な作業です。

しかも、苗管理は一日たりとも気を抜けず、育成状況に応じた細やかな対応が求められます。

秋（9〜10月）には定植作業が始まり、育てた苗を高設ベンチや畝に定着させます。この作業は肉体労働のピークであり、栽培床の準備や資材設置など、体力的な負担が大きくなります。しかも、この時期から気温が急激に下がるため、夜間の温度管理や防寒対策に追われることになります。

冬から春（11〜5月）はいよいよ収穫・出荷期。いちごは毎日収穫できるため、土日や祝日も関係なく作業が続きます。加えて、クリスマスやバレンタイン、ホワイトデーなどの繁忙期には注文が殺到し、朝3時から収穫を始めて深夜まで出荷作業が続くこともあるのです。

一見すると春の終わりに「一段落」するように思えますが、実際には休む間もなく次年度の苗の準備が始まり、修繕や機器点検なども行わなければなりません。つまり、いちご農家には「オフ」がないのです。

このように、一年中が慌ただしく、精神的にも肉体的にも休まる時間がほとんどないというのが、いちご農家の実情です。計画的に休みを取ることが困難なこの職業に対し、「やめとけ」と言いたくなる人が出てくるのも無理はありません。

いちご農家はやめとけと言われる背景にある課題

いちご農家に対して「金持ち」「高年収」といったイメージを持つ人もいますが、実際の収益や経営の実情はどうなのでしょうか。

ここからは、いちご農家の年収の現実、儲からないと感じる理由、そして実際にあった失敗事例を紹介しつつ、なぜ農家の数が減少しているのか、その将来性と改善策についても詳しく解説していきます。

いちご農家は金持ち？年収の実態

「いちご農家は儲かる」「成功すれば年収1,000万円も可能」といった話を耳にすることがあります。確かに、直売や観光農園、ブランド化によって高収益を上げている事例も存在します。

しかし、現実には“いちご農家＝金持ち”とは限らず、むしろ厳しい収支バランスに悩む農家のほうが多いのが実態です。

いちご農家の平均年収は、地域や栽培面積、販路の有無によって大きく差が出ます。

農林水産省のデータや関連調査では、専業のいちご農家でも年間売上は500〜1,000万円程度という層が多く、そこから資材費・労務費・燃料代・借入返済などを差し引くと、実際の「手元に残る金額（可処分所得）」は300万円前後になることも珍しくありません。

さらに、売上が安定していても、それを支えるために休日を返上し、長時間労働を重ねている農家も少なくありません。実働時間で割れば、時給換算で最低賃金を下回るようなケースもあり、「時間を犠牲にして収益を確保している」構図になりがちです。

加えて、年によって気候リスクや病害による収量の変動が大きく、いわゆる“当たり年”と“外れ年”の落差が激しいため、安定的な収入を得ることが難しいという問題もあります。

高収益を誇る農家は、長年の経験や独自のブランド力、強固な販路戦略を持っており、それらが揃ってはじめて「高年収」に結びつくのです。

つまり、いちご農家が金持ちというのはごく一部の成功者の話であり、一般的には設備投資や経費を抱えながら堅実に経営を続ける“地道な商売”であると言えるでしょう。

夢を持って就農するのは良いことですが、現実的な収益モデルを理解しないまま参入すると、理想と現実のギャップに苦しむことになります。

儲からないと感じる原因と実例

いちご農家としてやっていく中で「儲からない」と感じる農家は少なくありません。その原因は単純な売上の低さではなく、構造的なコストやリスクの高さ、経営の工夫が必要な業種特性にあります。ここでは、そう感じる理由と具体的な実例を紹介します。

まず、いちご栽培には高コスト体質という特徴があります。ハウスの維持管理費、加温用の燃料費、水耕栽培システムや灌水設備の電気代、資材費など、毎月かかる固定費が非常に高いのです。特に冬季は暖房にかかる費用が跳ね上がり、収益の大部分を経費が食いつぶすケースもあります。

また、市場価格の変動も利益を圧迫する要因の一つです。いちごは需要期に価格が高騰する一方で、過剰出荷や品質劣化があれば価格が暴落するリスクもあります。努力して育てた高品質のいちごも、価格が思うように上がらなければ利益は伸びません。

さらに、販売力の弱さも大きな課題です。農協に一任している農家では、市場に任せた価格で販売されるため、戦略的に単価を上げることができません。

一方で、直売やネット販売、観光農園などを活用して自ら販路を開拓している農家は、その分コストも労力もかかりますが、価格を自分でコントロールしやすくなります。

実例として、ある新規就農者は、2,000万円の設備投資で高設栽培を始めたものの、収穫初年度に暖房費が想定の1.5倍に膨れ上がり、収量も病害で予定の7割にとどまりました。

その結果、売上は500万円台に終わり、ローン返済と生活費で赤字が続いたといいます。設備は立派でも、実収益がついてこなければ「儲からない」という評価につながります。

このように、「儲からない」と感じる根底には、高コスト構造、価格変動、販売戦略不足といった複合的な課題があり、それらを克服しない限り、単に「一生懸命作った」だけでは利益にはつながらないのが、いちご農業の現実です。

失敗事例に見る共通の落とし穴

いちご農家としての新規就農には夢がある一方で、現実には失敗する事例も少なくありません。その多くには、いくつかの共通する「落とし穴」が存在しています。それらを事前に把握しておくことで、同じ失敗を避けるヒントになります。

まず非常に多いのが、「収支計画の甘さ」による失敗です。たとえば、初期投資に1,500万円以上をかけてハウスや設備を整えたものの、収穫が軌道に乗るまでの運転資金が足りず、1年目で資金ショートしてしまったケースがあります。

これは、収入が入るまでに時間がかかるという農業特有の資金循環を読み誤った典型例です。

次に、「栽培技術や病害管理の不足」が失敗要因として挙げられます。いちごは非常に繊細な作物で、温度・湿度・水分の管理が日々必要です。経験や知識が浅いまま始めてしまい、うどんこ病やハダニなどに全体を侵され、収量が大幅に落ちたという事例も多くあります。

特に新規就農者は、周囲に相談できるネットワークが乏しく、自己判断での対応が仇となることが少なくありません。

さらに、「販路を確保しないまま栽培を始めた」ことによる失敗もあります。農協出荷に頼り切っていると価格変動の波を受けやすく、思うような収益にならないケースが続出しています。

事前に直売所やネット販売、業者との契約などを組んでおくことが成功のカギとなりますが、それを怠った結果、「作っても売れない」という負の連鎖に陥ってしまいます。

こうした失敗事例に共通するのは、「勢いで始めてしまった」「計画と現実の乖離が大きかった」という点です。いちご農業は見た目の華やかさとは裏腹に、技術・経営・販売の三拍子が揃ってはじめて成立する職業であり、どれか一つでも欠けると継続が難しくなるのです。

減少している理由は将来性の不安

日本全国でいちご農家の数が年々減少している背景には、単なる高齢化だけではなく、「将来性への不安」が根本的な原因としてあります。これは、新規就農者が定着しない理由とも密接に関係しています。

現在のいちご農業は、高度な設備やノウハウを前提とした経営が求められるため、参入障壁が非常に高くなっています。例えば、ハウス栽培を前提とした近代的ないちご農園を立ち上げるには多額の初期投資が必要で、若い世代が気軽に始められるような環境にはなっていません。

その結果、「やってみたいけれど踏み出せない」という層が増加し、就農希望者が現場に定着しにくくなっているのです。

さらに、販路や収益性の不安も大きな障壁です。農協出荷では価格が安定せず、直売やネット販売にはマーケティング力が必要。これらを一人でこなすのは難しく、長期的に収益を上げ続けるビジョンが描けないと感じる人が多くなっています。

また、天候リスクや病害虫の問題が、いちご栽培の将来をさらに不透明にしています。温暖化の影響で病害の発生時期が読みにくくなっており、安定した栽培管理が難しくなってきています。これに対応するには専門的な知識が必要ですが、それを習得するには時間もお金もかかります。

結果として、「この先も継続してやっていけるのか？」という疑念を抱く若手農家や後継者が増え、世代交代が進まない要因となっています。つまり、いちご農家が減少している最大の理由は、“未来が見えにくい”という構造的な課題にあるのです。

将来性を高めるための工夫と対策

いちご農業には厳しい現実がある一方で、適切な工夫と対策によって将来性を高めることも可能です。持続的に稼げる農業として成立させるには、「技術力」と「経営力」、「情報発信力」の3つが鍵を握ります。

まず技術面では、スマート農業の導入が進んでいます。温度や湿度、日射量などを自動で管理できる環境制御システムは、労働時間の短縮と品質の安定化に貢献しています。

また、AIやIoTを活用した異常検知や病害予測なども始まっており、初心者でも一定の品質を保ちやすくなってきています。

経営面では、補助金制度や地域の就農支援プログラムを活用することが重要です。特に「経営開始資金」や「青年等就農計画制度」などを活用すれば、資金面のハードルを大きく下げることができます。

こうした制度は情報収集が鍵となるため、自治体や農業委員会、農業法人との接点を早い段階で持つことが成功への第一歩になります。

さらに、情報発信力を持つことで販路を広げる動きも目立ってきています。SNSやYouTubeを活用してファンを作り、いちご狩りやオンライン販売につなげる農家が増えています。農家自身がブランドを確立することで、価格競争に巻き込まれず、持続可能な経営が可能になります。

加えて、観光農園や地域イベントと連動した体験型農業など、「農業＋α」の工夫によって収益の柱を多角化することも、将来性を高める有効な戦略です。

つまり、厳しい現実を踏まえつつも、正しい知識と準備、そして時代に合わせた柔軟な経営スタイルを取り入れれば、いちご農業は十分に可能性のある分野なのです。将来性は与えられるものではなく、自ら構築していく姿勢が問われています。

まとめ

この記事のポイントをまとめます。

いちご農家は、単なる「農業＝のんびりした暮らし」という幻想とはかけ離れた、厳しい労働と繊細な経営判断が求められる仕事です。

しかし、課題を正しく認識し、対策と工夫を重ねることで、持続可能な経営を築く道も確かに存在します。

安易な憧れだけで始めるのではなく、現場の現実を正しく知った上で、自分の覚悟と資源を見極めることが、成功への第一歩です。